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ー雪山ー202

 その時、さっきまで元気だった雄介が体の不調を訴え始めた。 「なんやろ? 急に寒くなってきたわぁ」  そう両腕を押さえて訴える雄介。 「……寒く?」  今は暖炉の方にも火がついていて、暖かいはずだ。だが、夜中になってきているのだから冷えてきているのかもしれない。確かに先程よりも冷えてきたように感じるが、雄介の言うように『寒い』というほどではないような気がする。  何かを察した望は、雄介の額に手を置く。足を骨折したせいなのか、熱が出てきているように思える。だから寒いと言っていたのだろう。確かに、雄介の場合には足は骨折しているものの出血はあまりない。しかし、骨折している以上、足の内部では出血していることになる。内部出血によって血液の循環が悪くなっているのだろう。それで雄介は寒いと訴えているのかもしれない。 「熱が出ているのか、体の内部で血液循環が悪くなっているのかもしれねぇな。ちょっと、時間がやべぇのかも……!」  そう望は軽く独り言を漏らし、和也に声をかけた。 「和也、隣の部屋に確か毛布があったはずだから、持ってきてくれねぇか? 悪いけど、裕実には外の雪を持ってきてもらえると助かるんだけど……」  望がそう言うと、二人は文句も言わずに動き出し、和也は毛布を持ってきて、裕実はこの寒い中、外に出て雪を運びに向かう。 「はい! 毛布! 丁度、四枚あったし! 流石にこれからの時間寒くなるだろうしな……どうせ、今日はもう寝ないつもりだろうけど……寒さ対策はしておかないとな」 「ああ、ありがとう。まぁ、確かに俺は寝ないつもりだけどな。でも、雄介やお前らはみんな寝てもいいからな」 「まぁ、それはいいんだけど……望一人残して寝てなんかいられないし、とりあえず、雄介は絶対寝るんだからな! 後は裕実と交代で寝るからさ……」 「ああ、ありがとうな」  和也は雄介に毛布を掛けると、望にも毛布を渡す。残りの二枚は床に置く和也。 「望さん! 雪、持ってきましたよ!」 「重たいのにありがとうな……」 「いいんですよ、僕たちにはこんなことしかできませんからね」 「いや、十分だよ」  そう言うと望はいきなりその桶の中に手を突っ込む。そして、その冷やした手をそのまま雄介の額へと持っていった。 「お、お前! な、何してんだ!?」 「タオルがない状況じゃ、こうやってお前の頭を冷やすしかないだろう!?」 「あんなぁ、晩中そんなこと一人でやってたら、望の方が手凍傷になるぞ! それで使えなくなったらどうするんだ!?」 「そんなこと、言われなくても分かってる! だけど、誰かがこうしないと雄介が危なくなるだろうが……!」 「た、確かにそうかもしれねぇけど、な、望……雄介のために一生懸命になるのは分かるけど、凍傷で二度とメスとか握れなくなってもいいのか?」 「だから、分かってるって言ってるだろうが! 俺がやらなきゃ誰がやるんだよっ!」

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