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ー雪山ー203
「……ったく、俺たちがいるじゃねぇか……交代でやって、手を暖炉で暖めたらいいだろ?」
「あ、ああ、そうだったな……ありがとう」
きっと望には雄介を助けることしか頭になかったのだろう。雄介しか見ていなかったのだから、和也や裕実の存在を忘れていたのかもしれない。
やはり、こういう時でも望は冷静でいるようで、実際は冷静ではないのかもしれない。
和也と裕実は頭から毛布をかぶり、床に座る。
「裕実……先に寝ていいぜ。四時くらいになったら起こすからさ。そうそう! さっきな、望と決めたんだ。交代で寝ようってな」
「分かりました」
裕実はそう答えると、床に丸くなって目を閉じる。
「望も交代だ」
「ああ……」
望は雄介から離れ、暖炉の前で手を暖める。
和也も、望がさっきしていたように、桶の中に入っている雪に手を突っ込む。
「ぅ……くっ! さ、さすがに雪の中に手を突っ込むのは冷たいよな……よく、望はこんな中に手を突っ込もうとしたよな?」
「え? あ、ま、まぁな」
その和也の言葉に顔を赤くする望。そう『雄介のためだから……』と心の中で思っていたのだろう。
和也はすぐに雄介の額に手を乗せ、望のように雄介の額を冷やし始める。
「……で、和也……さっきの話は?」
そう望は二人が寝てしまったことを思い出したのだろう。そう聞いてきたのだから。
和也はその望の言葉にひと息吐くと、
「ああ、それか……? アイツはさ、高校の時、一緒のクラスだったんだよ。で、俺はその時にアイツに言い寄られてたっていうのかな? ま、俺の方は当然、無視を決め込んでたんだけどさ……俺的には、しつこくて嫌だったし、男に興味もなかったしな。だから、こっちから何かを頼むのは嫌だったっていうのかな?ほら、頼みごとしたら、お返しみたいなのはないのか? って言われそうじゃん……」
「そういうことだったのかぁ。何? そいつはお前と一緒で男役の方だったのか?」
「多分、そうなんだろうな……身長も雄介くらいあるし、見た目的には女役ではなかったからな。俺の方も当然、男役の方がいいわけだから、言い寄られるのはマジで嫌だったしさ」
「確かにそうなのかもな」
望はその和也の話にクスクスと笑っている。
「なー! だから、俺がアイツのこと嫌いだっていう意味が分かっただろ?」
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