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ー雪山ー204

「確かに、お前がアイツを嫌う理由が分かったよ。じゃあ、これからはそんなにアイツに頼めねぇってことになるよな。ってかさ、お前、案外モテるんだなぁ、違う意味で……」  そう望はクスクスと笑いながら言う。 「あー、そう言われてみればそうだよな。おかしいなぁ? 何で俺は男に言い寄られる派なんだ?俺は男でも女でも抱きたい方なのにさぁ。病院じゃあ、女性の患者さんにも人気ある方だって思ってるんだけどな。でも、そういうとこじゃ、女性に告られたことはねぇんだよな」 「お前の場合、女性からしてみたら、高嶺の花なんじゃねぇのか? 逆にかっこよすぎて、女性からすると『彼女いるんじゃないか?』って思われていて、近寄りがたいのかもしれねぇしな」 「それを言ったら、望もそうなんじゃねぇのか? 仕事は医者してるし、しかも病院でも人気あるみたいだし、そこは、影でこそこそとしてる女性たちの話を聞いたことあるしさ。まぁ、それで、頭もいいわけだろ? 女性にとって一番の理想なんじゃねぇのか?後はスポーツができれば完璧な高嶺の花だろ?」  そう和也は望に向かってニヤニヤしながら言うが、望は顔を赤くし、顔を俯かせてしまっている。  ただ、もしかしたら暖炉の前にいるから顔を赤くしているのか、それとも本当に今の和也の言葉で顔を赤くしているのかは分からない。しかし、そんな望に一瞬だけ和也は見惚れてしまっていたのかもしれない。久しぶりにまともに見てしまった望の横顔。  そんな自分に気付いた和也はすぐに首を振り、今考えていたことを頭の中から消そうとしていたようだ。  そんな時、 「……也! 和也! ……聞いてんのか!?」  と急に望に名前を呼ばれ、考え事をしていた和也はワンテンポ遅れて望の言葉に返事をする。 「……ん? 何?」  それと同時に顔を上げ、和也は望へと視線を合わせる。 「俺の手さぁ、暖まってきたから、交代しようぜ」 「あ、うん……そうだな」  和也は腰を上げて、今、望がいた暖炉の側へと移動し、今度は和也が暖炉の前で手を暖め始める。望は再び雄介の横へと向かうと、もう雪から水へと変わってしまっている桶の中に手を入れ、雄介の額へと手を乗せる。  雪から水に変わっても、相変わらず水は冷たいままだ。だが望は顔色一つ変えずに作業を続ける。 「なぁ、望にも彼女くらいはいたことはあんだろ?」 「まぁな。そういうお前こそいたんじゃねぇのか? 俺の場合には告白されたけど、最終的には向こうに振られたんだけどな。ホント、そういうところって勝手だよなぁ。最初は見た目とかだったのかもしれねぇけど、それで告ってきて、だけど性格とか抱き方が下手とか何とか言ってさ。嫌だったら、すぐに捨てられるっていうのかな? そうそう! 俺の方はちゃんと付き合ってる時にはデートだって行ってたし、デートの代金だって俺が払ってたんだし、それに、高級レストランとか、映画とか、パーティーだって連れて行ってたんだからな」

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