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ー雪山ー207

 そう静かに言う和也だが、今の望にはこれが一番効く言葉だろう。  望はその和也の言葉で目を覚ますと、 「ん……ゴメン……」 「望さぁ、眠いんだったら、無理するなよ」 「いや、大丈夫だ。起きてるから、気にすんな」  望は一旦、雄介の額から手を離して伸びをする。  望が自分の腕時計を覗くと、 「もう、夜中の二時だったんだな」 「ああ、そろそろ交代してやろうか?」 「ああ……」 「望はどうせ朝まで起きてるつもりなんだろ? なら、水で顔を洗ってみたらどうだ?」 「そうだな」  望は和也にそう言われ、桶に入っている水で顔を洗うと、暖炉の前へと移動する。和也は今度はまた水の中に手を入れ、雄介の額に手を乗せる。 「……で、さっきの俺の話、聞くか?」 「ああ……まぁ、そうだな。静かになると余計に寝ちまうだろうしな」  やはり水で顔を洗っただけのことはあるのだろうか。望はスッキリとした表情をしていた。 「まぁ、とりあえず、俺はそのお嬢様と付き合い始めたってわけだ。俺もそのお嬢様の恋人だったから、毎朝、車でのお迎えになったんだけどさ。やっぱり、俺的にはそういうのって合わなかったっていうのかな? そりゃ、お金持ちの生活には憧れるけどさ、でも、今まで俺は普通の家庭で育ってきたもんだから、合わないっていうのかな? 最初はやっぱり、お金持ちの気分を味わえているからいいって思ってたんだけどさ。でもな……やっぱり、彼女、さすがはお嬢様って感じの性格だったんだよな。なんていうの? 超が付くほど、わがままだったし、デートだって、ずっとボディーガードっていうのか執事っていうのか、そいつらが付いてるから自由にデートができなかったんだよな。だから、本当にデートだけって感じだったしな。そんな監視下でホテルとか自分の家にも行けるわけもねぇし、そんなんじゃ、やっぱり、付き合ってる意味がないって思った俺は、我慢の限界が来て別れたってわけだ。そうそう! その時から白井に追っかけ回されていたっていうのか、しつこいくらいに言い寄られてたから、そこで彼女ができて、しばらく大人しくしてたんだけどさ。まぁ、ある意味、俺は白井から逃げるためにもその彼女と付き合ってたっていうのかな? それから、高校を卒業して、専門学校時代には男と付き合ったってわけだ。まぁ、そいつがさぁ、男のわりには可愛くてさ、しかも、専門学校で男子の方が少ないわけだから、俺とそいつが一緒にいることが多かったし……だからっていうのもあったのかもしれねぇんだけど。だから、専門学校の時に、俺はその可愛い男子と付き合ってたってわけ」 「あ、だから、お前は最初っから男同士に関して知識があったんだな」 「まぁ、そういうことだな。それに、そいつに告白されて、付き合って、いろいろと教えてもらってたしなぁ。まぁ、専門学校を卒業してからは、違う病院で働くことになっちまったし、二人とも、病院で働くのは初めてだったし、連絡しなくなって、まぁ、自然消滅したって感じかな?」

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