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ー雪山ー210
望はその裕実の声に反応すると、
「窓の外を見てみろよ。風も止んできたみたいだし、もう朝みたいだぜ……」
裕実は望にそう言われて窓の方に視線を向けてみると、望の言う通り外が明るくなってきたようだった。
望は腕を組んで今の裕実のことを考える。
一体、裕実という人物はどれだけ観察眼があるのだろうか。前から裕実はドジなところだけが表に出ていたのだが、最近はそのドジなところが減ってきたように思える。そんな裕実のことを、望は凄いと思っているのかもしれない。
確かに、裕実のドジなところ以外は和也並みにパーフェクトな気がしてきたのかもしれない。
望は急にホッとしてしまったからなのだろうか。気を抜いた瞬間、腕を組んだまま後ろにひっくり返りそうになったが、誰かの手によって支えられた。
「あ、ゴメン」
「いいですよ。今のこの状況で一番大変だったのは望さんなんですからね」
「あ、ああ……もう大丈夫だからよ。背中から退いてくれても平気だからさ」
「本当に大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。本当にゴメンな。みんなにこう迷惑かけちまってるみたいでさ」
「そんなことはありませんよ。今はそう! 望さんが一番大変なんですからね。それに、僕たちの方は全然迷惑だとは思っていませんから、雄介さんとも仲間だと思っていますから」
裕実は望の背中から退きながら望に笑顔を向ける。そして、さっき座っていた場所へと戻っていく。
「ああ、ありがとう……」
望は俯きながらそう言った。
確かに恋人のことも大事なのだが、恋人と同じように友達や仲間も心を支えてくれるものだと、望は気付かされたような気がする。
「そろそろ、和也も起こそうか? 和也にはもう一仕事してもらいたいからさ」
「和也さんに仕事ですか?」
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