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ー雪山ー211

 どうやら裕実には望が考えていることは伝わっていないようだ。だからなのか、裕実は望に向かって首を傾げている。 「あ、ああ……ほら、明るくなってきて、雪も風も止んだだろ? だからさ、俺たちの中でスキーできるのは和也だけだろ? だからさ、和也にコテージの方まで行ってもらって、ヘリとか助けとか呼んできてほしいなーって思ってるわけさ……そしたら、雄介を病院まで運ぶことができるだろ?」  裕実はその望の説明で納得したのだろう。手を叩いて、 「そうですねー! 流石は望さんです! 流石の僕でもそこまで考えてなかったですよー」 「あのなぁ、そこは別に褒めるところじゃあねぇんだけど、だってな、俺はあくまで普通のことを言ったまでで……」  望はそう顔を伏せて答える。  大人になってから褒められると恥ずかしいと思うからなのかもしれない。それと、一番自分が苦しいと思っている時に褒められると辛いものがある。今はまだ平常心でいられている望なのだが、内心ではもういつ自分が崩れてもおかしくない状況だから、余計にそう感じるのかもしれない。 「望さん!」  裕実は急に大きな声を上げて望を呼ぶ。 「あ、おう! 何だ? 急に……」  望は裕実に笑顔を向ける。 「僕には嘘なんか通じませんからね」  裕実は真剣な瞳で望を見上げる。 「無理しないでくださいね。もし、和也さんが今の雄介さんのような状態だったら、僕も望さんと同じように感じると思いますよ。確かに、今の望さんは見た目は冷静そうに見えるんですけど、心の中では雄介さんのことが心配で大声で泣きたいと思っているんですよね? だから、本当に無理はしないでくださいよ。泣きたい時には思いっきり泣いた方がスッキリすると思いますしね」 「そうだな……ありがとう。だけど、そこはちょっと違うかな? だってさ、ここで俺が思いっきり泣いたところで、雄介が助かるわけじゃあねぇんだし、泣くのは雄介が助かってからでいいって思ってるからさ」 「はい! そうですね!」  裕実は笑顔でそう言うが、次に言ってくる言葉に望は目を丸くする。  望は裕実の瞳を見つめていると、

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