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ー雪山ー213

「さて、マジに和也のこと、起こさないとな!」  望はそう言いながら立ち上がろうとしたが、 「望さん! 本当に今は無理しないでくださいね。和也さんは僕が起こしますから」  そう言って裕実は立ち上がり、望を座らせてから和也を起こしにかかる。 「和也さん……起きてください……朝ですよ」  裕実は和也の顔に近づき、そう言うと軽く唇を重ねる。  その裕実の行動に、望は顔を赤くしてしまう。  まさか裕実がそんな起こし方をするなんて思ってもみなかったのだろう。確かに恋人同士なら、そういう起こし方もありなのかもしれないが、望は自分から雄介に対してそんな起こし方をしたことがないため、同じ立場である裕実の行動に意識してしまったのだ。  とりあえず、一瞬でも顔を赤くしてしまった望は、ごまかすためにも顔を伏せる。 「あ、もう……朝なのか? 裕実、朝からキスで起こしてくれるなんて、嬉しいことしてくれるじゃねぇか。じゃあ、俺からも……」  和也は半身を起こすと、裕実の後頭部を手で押さえ、和也からも裕実の唇へと唇を重ねる。 「ん……和也さん……朝から、そんなキスしないでくださいよ」 「サービスだよ……」  和也はそう言いながら、子供のような笑みを浮かべた。 「もー! 和也さん、その笑顔ズルすぎですからー!」 「クス……ホント、お前って可愛いのな……」  裕実は頰を膨らませて和也を見つめているが、和也にとってはそんな裕実が可愛くて仕方がないのだろう。  そんな朝からのイチャイチャを見せつけられている望は、もうそろそろイライラしてきたのかもしれない。  さっきまでは顔を赤くして伏せていたが、今度は怒りで顔を赤くしているようだ。 「お前らなぁ、イチャイチャするのはいいけどさ……今の状況を考えてくれねぇかな?」 「ん? あ、ゴメン……そうだったな。で、望……俺たちはどうしたらいいんだ?」  流石に和也も、望がイライラしていることに気付いたのか、いつもの自分に戻して望に視線を向ける。

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