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ー雪山ー220

「ん? あ、ああ……」  望は体を起こし、今何が起きているのかを把握するために、キョロキョロと辺りを見渡した。  窓から見える空は、望が寝る前までは頭上にあった太陽が、今はもう一日の仕事を終えて沈もうとしているところだ。 「望さぁ、眼鏡外さないで、うつ伏せの状態で寝てただろ? 眼鏡の跡、残ってんぞ……」 「……へ!? マジでか?」  確かに、睡魔に負けて指一本動かせないような感じだった望。眼鏡を外し損ねたかもしれないが、跡が顔に残っているとは思ってもみなかったようだ。  望は慌てた様子で病室にある鏡の前に立つ。  確かに、和也の言う通り、眼鏡を外すと左側の頰の上あたりに眼鏡の縁の跡がくっきりと残っていた。  望は眼鏡を洗面台の上の棚に置き、顔を洗ってみたが、かなり長い間そのままだったため、洗ったくらいでは落ちそうになかった。 「ま、こんくらいなら、暫くしたら治るだろうからいいか……」  そう言って、望はやっと和也と裕実がいることに気付いたようだ。眼鏡をかけ直し、さっき座っていた椅子に腰を下ろす。 「お前たち、もう帰って来てたんだな」 「まぁな、車も空いてたし、案外早く帰って来れたよ……ついでに荷物も持って帰ってきたからな」 「あ、ああ、ありがとう……」  望はその場で軽く体を伸ばすと、起きた直後の騒がしさを思い出した。 「さっきさぁ、お前たち、なんか騒がしくなかったか? 何を話してたんだよ」 「んー、それ、望は聞きたいの?」  和也は望に向かって怪しい笑みを浮かべた。 「な、なんだよー。その、いやらしい顔はさ……また、お前たちはそんな話をしてたのか?」 「え? まぁ、普通っちゃ普通のことなんだけどさぁ、まぁ、雄介が恥ずかしがるような顔を見たって感じかな?」  和也は楽しそうに話すが、雄介はさっきの話を思い出したのか、ゆっくりと顔を赤くし始めた。  望は和也の話に何かピンと来たようで、首を傾げていた。 「本当、雄介さんがあんな顔するなんて僕も思っていなかったですよー」

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