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六章ー波乱ー1
あれからしばらく入院することになった雄介。しかし、以前の入院時よりも充実した入院生活を送っているように感じられた。
というのも、回診の際には雄介の恋人である望が診察に来てくれるし、検温の時間になると裕実や和也が訪ねてきてくれるので、退屈することがない。
そんなある夜、検温の時間になると、ノックの音が聞こえてきた。
「はーい」
雄介が返事をすると、入ってきたのは和也と裕実だった。
「なんや、今日はお前らか」
「『お前らか……』って、つまんなそうに言いますけど、望は検温には来ませんよ」
「うわっ! 気持ち悪っ! お前に敬語使われると、もう、首とか痒くなってくるわぁ」
「悪かったな。でも、今は病院で働いてる時間だし、敬語を使うのは当たり前だろ。それはさておき、たぶん熱はないと思うけど、仕事なんで検温させてもらっていいか?」
「あ、ああ、おう……」
雄介はそう言われて、和也から体温計を受け取り、脇に挟んだ。
「まだまだ業務的なことをさせていただきますが、よろしいでしょうか? 桜井さん……」
和也がそう言うと、最近タメ口に慣れていた雄介は、再び和也の敬語に鳥肌が立つような気分になった。
「やっぱり、それ、アカンわぁー。ちょっとやめてくれへんか? あー、もう! 寒くて死にそうになるしー」
雄介は和也に向かって、まるでお願いするかのように両手を合わせた。
「構いませんけど……」
「とか言いつつ、使ってるやんかー!」
「あー、もう! 分かったって、だから病室であまり大きい声出すなっつーの! 耳に響くしさ……それに、体温計ってる時は基本的に大人しくしてなきゃなんねぇの……ちゃんと測れないからな。ま、それもさておき……今日はちゃんとトイレに行ったのでしょうか? 回数も答えてもらわないと!」
和也は念を押すように、雄介に問いかけた。
この話題はついこの間出たばかりで、その時は雄介が顔を赤くするだけで済んだが、今回はいよいよ本番のようだ。
「あー、それな……まぁ、今日は二回くらいはトイレに行ったかなぁ?」
完全に視線を逸らしながら、雄介は答えた。
「じゃあ、それは誰に連れて行ってもらったのかな? 俺たちは一回も雄介をトイレに連れて行った覚えはないけどなぁ」
「他の看護師さん達にな」
視線を逸らしたまま答える雄介に、和也はその嘘がバレバレであることに気づき、腰に手を当てた。
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