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ー波乱ー2

「そうか……そういうことなんだな。よーくわかったぞ、雄介が本気で嘘をついているのが。嘘じゃなければ、俺の顔を見て言えるだろ?」 「あー、もう! 本当に仕事中の和也って怖いわぁ」 「当たり前だろ……怖くなくてどうするんだよ。甘くしたら、お前みたいな奴は本気で病気になるんだからな!」 「裕実ー、和也はいつも仕事中はこうなんか?」  と雄介は裕実に助けを求めたつもりだったが、 「僕も雄介さんの場合には容赦しませんよ」  と、裕実は笑顔で答えたが、その言い方にはどこか棘が感じられた。 「あー、もう……裕実までなんか。しかも、雄介さんだけって、どういう意味やねん」  そう雄介がぶつぶつと文句を言うと、 「まぁ、雄介さんは望さんの大事な恋人さんですからね。これ以上、望さんに心配をかけないようにしてくださいよ」  その裕実の言葉に、雄介の表情が変わった。 「せやな……ほんま、お前らには負けるわぁ。望のためにも、早よ治らんといけないしな」 「ああ、そういうことだっ! で、今日は本当にトイレに何回行かれたんですか?」  和也は本題に戻った。 「あー、ほんま、和也って仕事の時は……意地悪なんやなー」 「望のために病気になりたくないんだろ? だったら、もう正直に答えたらどうだ?」 「あー、もう、何回も言うなやぁ。一回だけやって……」  と、雄介は降参したかのように言うと、 「一回しか行ってねぇのか? じゃあ、普通に生活してたら、そろそろここ、パンパンになってるよな?」  和也は目を細めて突っ込むように質問を繰り返した。 「それはないんかな?」  雄介は再び和也から視線を外して答えた。 「さっき俺には嘘は通用しないって言っただろ?」  和也は意地悪な笑みを浮かべた。

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