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ー波乱ー6

 望が着替えに行っている間、和也はソファに体を預け、考え込んでいるようだった。  今日の望は、和也に対して珍しく素直に口を開いたように思える。それほど今の望は雄介のことが気になっているのだろう。 「すっげぇよな……雄介って……。望の心をそこまで動かせた奴なんて今までいなかったのにさ。やっぱ、俺には望の恋人は向いてなかったのかもな。ま、俺は望のこと諦めて良かったのかもしれねぇ。まぁ、そうじゃなきゃ、裕実と付き合うこともできなかったしな」  和也はそう長い独り言を漏らし、ソファから体を起こす。その時、ちょうど望も着替え終わり、ロッカールームから出てきたようだ。 「じゃあ、俺は帰るからな……後、部屋のことはよろしくな」 「ん? もう帰るのか?」 「そりゃ、仕事終わったんだから帰るに決まってるだろ?」 「いやさぁ、さっきまで雄介のことを話してたから、今日は雄介のところに行くのかと思ってたんだけどさ」 「なーに言ってんだ? もう、今日は九時過ぎだし、病棟は消灯時間だろ?」 「そっか。本当、望って可哀想なんだな……こんなに近くに恋人がいるのにさ、仕事でしか雄介には会えないんだもんなぁ」  和也はさりげなくそう言う。  和也にそう言われるとは思っていなかった望は、目を丸くして和也を見つめ、すぐに視線を外して、 「え? あ、ま、まぁな……」  と、急に素直に答える。  そこで和也は、 「やっぱさ、俺がお前らのためにプライベートな時間作ってやるよ」  と言いながら、望の返事を待たずにロッカールームへと消えていく。  部屋に残された望は、さっきとは違い、少しスッキリとした表情を見せ、陽気な様子で鍵のフックに指を入れて回しながら部屋を出て、家へと帰っていった。  一方、和也もそんな望の様子に気づいたのか、クスリと笑いながら着替えを終え、自宅へと向かった。  和也の恋人である裕実が夜勤で、和也も家に帰るしかなかったのかもしれない。  平穏だった日々が、次の日から望や和也にとって平穏ではない日々に変わるとは、誰も予想していなかった。

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