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ー波乱ー8

「分かりました。私の父の指示であれば仕方ないでしょう。私に関わるのは構いませんが、和也には一切手を出さないようにお願いいたします。とりあえず、あなたがこの病院に来たということは、和也に何か仕掛けようとしている可能性があると、前に会ったときに知っているからです」  その望の話を聞いて、颯斗はフフと笑う。 「さすが吉良先生ですね。梅沢さんとの仲は良いようですし、仲間意識も強いようですしね」  そこで望は逆に不思議に思った。なぜこの新城という男は、自分と和也の仲をそこまで詳しく知っているのかということだ。  今までプライベートで颯斗に会ったのはたった一回。確かに病院に入院していたときには何度も会ってはいたが、望と和也がこんなにも仲が良いことを知っているとは思わなかった。  とりあえず時間になってしまったので、それ以上突っ込んだ話はできず、 「とりあえず、今日からよろしくお願いしますね」  と、望は冷たい口調で言い、自分の準備を始めた。  その望の態度に、颯斗はクスリと笑った後、急に和也に向かって話しかけた。 「梅沢さん、今の話、全部聞いていたんでしょう?隠れてないで、堂々と聞いたらよかったのにね」  颯斗は和也が隠れている方に向かって言った。  その言葉に驚いたのは、望と和也だった。望はまさか和也が隠れて話を聞いていたとは知らず、和也が隠れてまで聞いていたことに驚いたのだ。  一方、和也は、自分が隠れて聞いていたことがバレたことに驚いていた。 「なんだ……気づいてたのか?俺が来てたのをさ」 「まぁ、私はこの位置にいたのだから、君が来ていたのは知ってたよ」 「うるせぇ、俺はお前に俺の行動を知られたくねぇんだよ」  和也はそう言いながらロッカールームへと消えていった。 「とりあえず、今日からしばらくの間、君たちと一緒に行動するから、よろしくな。あ、あぁ!それとさ、研修期間が終わったら、今度は本宮さんと一緒にコンビを組んで仕事をするように院長に言われているからさ」

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