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ー波乱ー10

 そんな颯斗の姿に、望は安心するどころか、ため息を吐いた。  普通なら、できる人が入ってきたら喜ぶところだろうが、望や和也にとって颯斗はまったく良い印象がない。むしろ敵のように感じているため、素直に喜ぶことができないのだろう。  颯斗は午前中の診療を、望と同じようにこなしていた。 「こんなもんですが、どうですか?」  そう言って、自分から感想を聞きに来る颯斗。  普通、新人ならそんな余裕はないはずだ。それに、そんなことを聞かれても、望は颯斗に対して敵対心を抱いているため、答える気にもなれない。しかし、感想を求められたことで、何か答えなければならないという心理が働いたのか、望は息を吐き、適当に、 「まぁまぁかな?」  と答えた。  これが感想としては妥当かもしれない。わだかまりのない相手であれば、褒めているところだろうが、相手が颯斗では話が別だ。 「まぁ、あなたのその状況でしたら、それが妥当な答え方かもしれませんね。ま、僕の実力を認めたくないから、そう答えたというのが普通……」  颯斗はそう言いながらも、まだまだ余裕がありそうな雰囲気だ。  その言葉に再び望は息を吐き、 「まぁ、午前中はこれで終わったので、そろそろ時間ですし、行きましょうか?」  とだけ告げ、和也と共に診察室を後にした。  望の後について出てきた和也が、望の背後から声をかける。 「望ー」 「言わなくても分かってる」  普段は内緒話をしない二人だが、和也は望にくっつき、こそこそと話し始めた。 「まぁ、でも、今は何もできないんだから仕方ねぇだろ?」 「あ、まぁ、そうなんだけどよ」 「何一つあいつには弱点なんてないしさ」 「……弱点!?」  望の言葉に驚いた声を上げる和也。 「だって、そうだろ? 言葉じゃ勝てる気がしねぇんだから、あいつの弱点を見つけた方がいいんじゃねぇのか?」 「ん……まぁ、そうなんだけどさ、一切、あいつにはそんな弱点なんか無さそうなんだけどな」

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