810 / 972

ー波乱ー16

「……って、吉良先生はそう言いますけど……人のこと言えますか? まぁ、コンビシステムの方は分かってますよ。だって、コンビで仲良くないと仲間割れとかしてしまうと仕事に支障が出てしまい、医療事故になりかねませんしね。ですが、プライベートと仕事をきちんと分けていないのは、お二人ともでしょう? 今日の仕事の時に最初に威嚇してきたのは吉良先生と梅沢さんの方なんですから……まさか、気付かれていないってことはないですよね? 現に患者さんたちに気付かれていたようですしね。私の仕事を邪魔してきているのはむしろお二人なんじゃないんでしょうか? 説教される前に自分のことをきちんとしてから言わないと説得力に欠けてしまいますよ」  颯斗はそこまで言うと、ソファから立ち上がってロッカールームへと消えていくのだ。  やはり、そこまで言われると望だって悔しいのであろう。手に拳を握ると、ソファを叩く。 「……望?」  和也はそう口にしながら、望のことを見上げる。 「大丈夫だ……」  そう言いながら、望は眼鏡を外して目頭を手で押さえる。  そして気合を入れて頬を軽く叩くと、 「俺たちの方も帰ろうぜ。今日はもう色々と疲れたしな……ゆっくり体を休ませて、また明日頑張ればいいだろう? 一人になった方が冷静になれて、何かいい案が見つかるかもしれねぇじゃねぇか」 「別に早く帰るのはいいんだけどさ、望は雄介のところに行かなくていいのか?」 「今はそれどころじゃねぇだろ? 雄介の方は治ればいつでも会えるんだからさ。そうそう! 前と違って今は一緒に住んでるんだからさ」 「ん……まぁな……」 「それと、本当は俺がお前の側にいてやってもいいんだけどさ……どうせ、俺なんかといるよりかは裕実の方がいいだろ? とりあえず、お前はしばらくの間、裕実と一緒にいるようにしろよ……一人でいるよりかは安全なような気がするからさ……まぁ、裕実と一緒にいられない日は俺がお前の家に行ってもいいし、俺の家に来てもいいしな」 「あ、ああ……ありがとう。今日はまぁ裕実のことを呼ぶからよ。だから、今日、望は雄介のところに行ってやれよ。別にキスをして来いって言ってる訳じゃねぇしさ」  そう言いながら、和也は望に向かって笑顔を見せる。 「そうだな……お前がちゃんと裕実と一緒にいるって誓ってくれるんだったらいいぜ」 「チェッ! 今日の望はなんか強気だよな……望にそんなこと言われるとは思ってもみなかったことだぜ」 「どうだー、俺だって、言う時には言うんだからな」 「みてぇだな」  そう二人でクスクスとしていると、颯斗はもう着替えて来たのであろう。荷物を持って、 「お疲れ様でしたー」

ともだちにシェアしよう!