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ー波乱ー17

 颯斗が部屋を出て行く姿を、和也と望はとりあえず笑顔で見送った。そして、颯斗が完全に部屋を出ると、二人は思いっきりソファの背もたれに体を預けた。 「ホント、今日は違う意味で疲れたわぁ」 「俺も。こんなんじゃ、さすがに身が保たねぇよ」 「あ! そうだ!」  望はその言葉と同時に体を起こし、 「さっき俺が言っていたこと、きっとアイツには聞かれていたと思うんだ……だからさ、逆に和也はこの部屋に泊まるようにしたらいいんじゃねぇのか? まあ、俺も暫くの間ここに泊まるつもりでいるけどよ。うん! 確実にアイツがお前のことを狙ってるんだったら、ここに泊まった方が安全だろうしさ」 「あ! そういうことか。確かに、アイツが帰ったんだったら、ここにいた方が安全だもんな」 「鍵閉めてしまえば完全に安全な空間になるわけだろ? それに、今日は俺たちは当直じゃねぇし、鍵閉めておいても大丈夫だろうしな」 「ああ、そういうことだな」 「さて、俺は着替えてくるかなー?」 「ああ、行ってこいよ」  望は和也のその言葉に笑顔を向けると、ロッカールームの方へと消えていった。  それから二人は、珍しく会話も弾み、久しぶりにこの部屋のベッドで休むことにしたらしい。  そして翌日、颯斗が来る前に鍵をこっそり開けておき、二人で颯斗が来るのを待つという状態にしておいた。  颯斗がやって来ると、昨日とは違い、まず望は颯斗に言い返されたことを実行へと移す。 「今日の仕事は診察と回診だからな」 「昨日とは違う態度ですね?」 「そりゃそうだろ? まずは俺が見本を見せないとって思ってな。仕事は仕事で、プライベートはプライベートだっていうことだ」 「流石ですね。でも、その気持ちがいつまで続くでしょうかね?」 「ずっとに決まってるだろ!」  望は颯斗に向かってそう言い放つと、診察室へ行く準備を始めた。  今日の望は、いつもと変わらない様子で仕事をこなしているようだ。昨日、颯斗に言われた通り、自分がちゃんとしないと部下を動かすことができないと思ったからなのかもしれない。  午後からは回診の仕事へと移った。  望が担当患者のところを回っていると、いよいよ次は雄介がいる病室だ。  望は軽く雄介には二、三日会っていない状態でもある。  だが、今日は完全に颯斗に仕事を任せているのだから、今日の望は雄介と話すことも触れることもできない。  そんなことを考えながら、望と颯斗、そして和也は雄介の病室へと入って行った。

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