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ー波乱ー18

「どうも、初めまして。新城颯斗と言います。昨日からこちらの病院で働かせていただいております。今はまだ吉良先生のご指導のもと、研修中の身です」  颯斗はそう笑顔で自己紹介した。 「あ、はい……よろしくお願いします」  挨拶を交わしたものの、今は仕事中。望と和也はその様子を見守るしかなかった。  颯斗は回診でも問題なく動いている。だが、彼が雄介の足に触れた瞬間、望は胸がざわめくのを感じた。颯斗の手の動きがやけにゆっくりで、焦ったい気持ちがこみ上げ、声を出しそうになるのを必死に抑えた。  目と鼻の先に恋人がいるのに触れられないもどかしさから、望は貧乏ゆすりでもしたくなる衝動を抑え込む。  颯斗が雄介の足を診察する姿は、実際には治りかけていることを確認しているだけなのだが、その触れ方がどこかいやらしく感じられ、望の心は揺れ動いた。  診察を終えると、颯斗は言った。 「そろそろ車椅子生活を始めてもいいのではないでしょうか? むしろ、桜井さんにとっては、動けない方が窮屈に感じるでしょう」 「え? あ、まぁな……」  雄介はそう答えながらも、ちらりと望の顔色をうかがう。 「あ、ああ、そうだな……それが、いいのかもしれませんね」 「吉良先生? 桜井さんはもうとっくに動ける状態になっていると思うのですが、なぜここまで引き延ばしたのですか?」  颯斗の問いに、望と和也は固まってしまう。  なぜ、雄介にそうしなかったのか――理由は確かにある。しかし、それを口にすれば、颯斗の思う壺になりかねない。  そこで望は適当に答えた。 「ちょ、ちょっと様子を見ていただけですよ」 「吉良先生、動揺してますか? 嘘をついているようですね。まあ、理由は何となくわかりますよ。ね、吉良先生の恋人である桜井さん」  颯斗がどれだけ和也の交友関係を知っているのか、その言葉に三人は驚きを隠せなかった。  とりあえず、三人は雄介の回診を終え、病室を後にする。  雄介の病室を出た後、今日の仕事は終わりだ。その途中、和也はある女性に声を掛けられる。 「すみません……」  申し訳なさそうにパジャマ姿の女性が、和也に声を掛けてきた。そして、彼女は突然和也の手を握ると――。

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