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ー波乱ー20

 それから、和也と望は廊下を歩きながら自分たちの部屋へと向かった。 「おいっ! 和也!」 「言わなくても分かってるよっ! 裕実がいるのに、なんで直ぐに断らなかったってことだろ?」 「ああ」 「望はさ、一人しか付き合ったことがないから分からないのかもしれねぇけどさ。女性側から男性に告白するってことは、どれだけ悩んで告白してきているかって分かってるか!? それに、今のは完全に患者さんだったじゃねぇか。体もだけど、心の方も完全に弱くなってるだろ? そんな時にショックなことが起きてみろよ。治るもんも治らなくなっちまうんじゃねぇのか? 俺だって、直ぐにでも断りたかったさ。でもさ、直ぐに断ったらマズイんじゃないかと思ってさ、あ、俺からしてみたら、その女性に対する優しさってとこなのかな?」  和也は望から視線を外し、 「くそっ! こんな時にっ!」  そうだ、まだ和也の方は颯斗のことが解決したわけではない。その最中に告白を受けてしまったというわけだ。しかし今度は女性からだ。その女性は患者さんで、断るにも骨が折れそうな感じがする。傷つけぬように断るにはどうしたらいいのだろうか? そこが今回の問題点なのかもしれない。 「和也ー、やっぱり、そろそろ雄介にも相談した方がいいって。確かに今回の女性に関しては裕実や俺では頼りねぇかもしれねぇけど、雄介なら何かいい案があるかもしれねぇじゃねぇか」 「大丈夫だって……今苦しむのは俺だけでいいからさ」  和也はそう言うと、望より先に歩き出して部屋へと向かった。 「……ったく」  望は先に行ってしまった和也の後を、ため息をつきながら追いかけた。 「お前なぁ、なんで俺たちのこと頼らないんだよ」  望は和也を捕まえ、彼の腕を掴んだ。 「頼りねぇからだ! それだけじゃダメなのかよっ!」  和也はそう言いながら、望を睨みつけた。 「嘘を吐くなっ!」  そんな和也の態度に、望は怯むことなく負けじと和也を睨み返した。 「例え嫌なことがあっても、お前は俺に八つ当たりはしなかったはずだ。でも、今のお前は違うっ! 俺に八つ当たりしてんだよっ! 本当は頼りたいんじゃねぇのか? 俺たち、どれだけ一緒にいると思ってるんだ……? 俺だってお前のこと、よーく知ってるんだからなっ!」  和也は望の言葉にため息をつき、 「分かってる……」  と小さな声で呟いた。 「だけど、俺が人に頼るってこと……」

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