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ー波乱ー21
「できないのも知ってる。お前が今まで一人でいろいろなことに向かってきたのも分かってる。俺たちが頼りないのも分かってる。だけど、昨日から何度も言ってるだろ? 一人で悩みを抱えるなって。頼りなくても頼ってくれた方が俺たちは嬉しいし、その気持ちは分かってくれないのか?」
「……だよな。でもさ、俺の方が上手く頼ることができてないのかもしれないな」
「じゃあ、頼るとは思わないで、話すだけでいいんじゃないのか? それだけでも気持ちは違うと思うぜ」
和也もその真剣な望の気持ちが伝わったのか、望に笑顔を向けると、
「分かったよ。ありがとうな……望」
「あ、ああ」
望はそう言うと、和也から手を離した。
「お前たちさぁ、そこで何イチャついてんねん」
「雄介!? あ、こ、これはだなぁ……」
と、望はなぜかそこで顔を赤くして、視線を雄介から逸らしてしまった。
「望……焦らなくてもええよ。まぁ、望が焦る姿は可愛いけどな」
望と和也が話をしていた場所は、外科病棟のエレベーター前だ。そして、そこに現れたのは車椅子に乗った雄介だった。
「まぁ、今の話全部聞いてたわぁ。ってか、その話、この辺一帯には聞こえてたっていうんかな?」
それを聞いた二人は顔を赤くし、俯いてしまった。
「最初はここで二人で芝居でもしてるのかな? と思ってたんやけど、どうやら違うみたいやんな。とりあえず、もう仕事終わりやねんやろ? まぁ、仕事着は脱いで来てな。そしたら、和也の話聞いたるし」
「でも……」
「もう、俺もその話聞いてもうたんやから、巻き込まれてるのと同じことやで……」
雄介はそう言うと、もう何度も入院しているからか、車椅子を器用に使いながら自分の病室へと戻っていった。
望は和也の肩をポンと叩くと、
「雄介もああ言ってくれてるんだから、和也もそろそろ仲間を信じたらどうだ?」
「あ、ああ……うん……」
和也はまだ納得していないようだが、二人はエレベーターに乗り込むと、自分たちの部屋へと向かった。
部屋に戻ると颯斗が、
「遅かったようですが、何をしてたんですか? 私の方はもうとっくに仕事を終わらせましたよ」
颯斗はそう嫌味のように言うが、その颯斗の言葉に望は、
「ありがとう……」
そう素直に言うと、今まで着ていた白衣を脱いで椅子に掛け、颯斗がやってくれていた書類に目を通した。
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