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ー波乱ー23
「暴力でも振るう気でしたか?」
また、颯斗は余裕そうな笑みを浮かべている。それは、まるで大人が子供を扱っているかのようだ。
今まで四人の中で一番大人っぽく感じられていた和也だったが、颯斗を前にするとまるで子供扱いされているようにも見える。
「ま、今日は帰ることにしますよ。今は毎日が楽しいですから、また明日も来ますしね」
そう言うと、やっと颯斗はロッカールームの方へと姿を消す。
それと同時に、和也と望はため息を吐く。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃねぇよ。こんなんじゃ、毎日毎日、身が持つ訳がねぇじゃねぇか」
和也は颯斗のことでいっぱいいっぱいになり、頭を抱えてしまっていた。
「やっと本音を出したようだな」
望はそんな和也を見てフッと笑う。
「……本音!?」
「ああ、なんていうの? 今さ、和也は『身が持たない』って漏らしただろ? だから、それが今の和也の本音なんだろう? って思ってな」
「あ、悪い……」
「悪いなって思うなって言ってんだろ? そうやって言葉に出したってことは、和也の本心な訳で、直接俺にそれを言ってなくても、聞こえるような声で言ったってことは、俺に聞かれてもいいってことだし、心を開いてくれたってことにもなるんじゃねぇのか?」
「……やっぱ、下手に望の前では嘘つけないってことだよな?」
「俺が本気になれば、もっともっと、お前の本心を引き出せると思うけどな。人の気持ちが分からないで医者なんてやってられると思うか?」
「そりゃそうだ。あ! だから、望が担当している患者さんは、毎回満足したような感じで帰って行くのか!」
和也は思い出したかのように言う。
「そうなんじゃねぇのか? ま、そこは多分だけどさ。よし! オッケー!」
望の声と共に、颯斗がロッカーから出てくる。そして、昨日同様に「お疲れ様ー」と言いながら部屋を出て行くのだ。
「ほら、俺たちも着替えるぞー!」
「え? 何? 一緒に着替えていいのか?」
ニヤニヤとしながら言う和也だが、
「まぁ、俺の方は脱がなくてもいいんだし、後は着るだけなんだし、お前に見せるもんはねぇんだよ」
望は意地悪で言ったつもりだったが、
「なら、俺が見せてやるー!」
「ふざけてねぇで、さっさと着替えやがれっ! 雄介が待ってるんだからなっ!」
「そうでした……」
和也は望の言葉にシュンとしたような感じになると、着替えにロッカールームへと消えてゆく。
望は上着だけを変えると、和也の着替えが終わるまでソファで待っていた。
「よしっ! 行こうぜ」
「ああ、いいけど、裕実には連絡しなくていいのか?」
「そうだな。アイツ、今日は十八時までって言ってたから、一応、連絡だけは入れておくかな?」
和也はそう言うと、裕実へと連絡を入れ、それから望と和也は雄介がいる病室へと向かうのだ。
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