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ー波乱ー25

「そいつがさ、俺のこと好きみたいで、俺に付きまとってるんだよ。それと、ついさっき、女性に告白されたってことかな? とりあえず、女性の方は保留って感じにしてあるんだけどさ。じゃあさ、雄介は望がいる状態で女性に告白されたらどうするんだ?」  最初は乗り気じゃなかった和也だったが、もう話すしかないだろうと思ったのか、その後は一気に雄介に話し始めた。  そんな和也に対して、雄介は本当に真剣に聞いてあげている様子だ。 「せやな……保留ってことは、返事を待たせておるって感じなんやろ?」 「まぁ、そういうことだよなぁ。だってさ、女性でしかも入院患者さんだぞ……心も体も弱ってるときに断るなんてできるか!?」 「まぁ、確かにそうなんやけど……どっちにしろ断るしかないんやろ? それなら、同じことやんか……それが先になるのか後になるのかって話やしな。まぁ、その女性があとどれくらいで退院するのかは分からへんけど……」 「それはいいんだけどさ……とりあえず、どう断ったらいいと思う? なんかこう、綺麗な断り方ってないのかな? 今さら、俺の好みじゃなかったから……っていうのは可哀そうだろ?」 「あ、まぁな……」  雄介は一言だけ和也に返すと、今まで乗り出していた体を再びベッドの背もたれへと預けた。  その横で聞いている望は、さっき雄介に「今日は黙っておいて」と言われていたため、静かに和也と雄介の会話を聞いている。 「とりあえずさ、この女性の話は裕実が来る前に話をつけておいた方がいいんじゃねぇかな? この話はさすがに裕実に聞かれるのはマズいだろうしな……」  望は二人の会話が一段落した時に、そう言っておく。 「確かにな……そうかもしれへんなぁ、裕実に聞かれたらちょい厄介なことになりそうやしな……アイツ、案外嫉妬深いみたいやし」 「やっぱ、雄介もそこには気付いてたか!?」  そこで大きな声を上げる和也。 「すっごい、喋りが上手いっていうんか、その中に深い意味が隠されてるような気がして、たまにこっちがドキッとする時があるしなぁ。まぁ、望にはそういう器用なところないからええねんけど……」  ふざけたように言う雄介に、望は目を細めて言った。 「俺と裕実の話はいいから、今は和也の話だろうが……それこそ、黙れって言いたいところだぞ……」 「あ、まぁ、そうやったな。そやな…傷つけんと断る方法なぁ?」  雄介が独り言のように言った後、望は和也に向かって、 「とりあえず、俺じゃあ力不足かもしれねぇけど、俺も考えるからさ……」 「あ、ああ……ありがとうな……」  和也は本当に望に向かって感謝の気持ちを伝えたが、そんな二人の間でふざけているのは雄介の方だ。雄介はその望の言葉に、 「望にそないなこと、考えることができるんか?」 「協力するっていうことはゼロではないってことだろ?」

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