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ー波乱ー26

 雄介がふざけてしまったのが馬鹿みたいで、望の口からは本当に真面目な答えが返ってきたようにも思える。 「ホンマ……望は真面目ねんから」 「お前がふざけすぎなんだろ? なんで真面目になれねぇのかな? ホント、それだと真面目にお前に頼んだ俺が悪かったみてぇだな」 「そんなんじゃないわぁ」  そう雄介は意味ありげに言う。そして、望に気づいてほしいと思っているのかもしれない。  その雄介の言葉に、何か気づいた望は、 「今の言い方だと、何か言いたそうだな?」 「やっと分かってくれたみたいやな? ちゃんと俺だって考えておるんやで……。和也のためにな。せやけど、こないな時にみんな暗い顔してどないするん? せやから、こう明るくふざけた感じにしなぁって思うねんな」 「まぁ、それは確かにそうは思うんだけどさ」  二人の会話に和也がクスリと笑う。 「雄介ー、それ、俺も分かるな。俺もそうだからさ……」  和也は雄介と同じ意見なのか、笑顔で雄介のことを見上げると、雄介と視線が合ってしまったようだ。 「せやろ!?」 「ああ、分かる! 分かる!」  どうやら和也と雄介は似たような性格らしく、意見が合ったようで急に嬉しそうな表情をしている。そんな二人に安心したような表情を見せたのは望だ。 「ま、真面目な望には分からへんやろな? 俺たちが真面目な話の時にふざけるっていう意味がな……」 「だな……」  二人に急に仲間外れにされたような気分の望だが、まぁ、この二人が急接近してくれたようで、軽く息を吐くのだった。 「……ってかさ、今はそういうのはいいから、お前らもマジに真面目に考えろよ」 「はいはい……そうやったな」  雄介は望にそう一言だけ返すと、今度は真面目な表情で和也のことを見つめる。 「なぁ、和也……もう、ストレートに言ってしまえばええんとちゃうか? その和也に告ってきた女性っていうんは、そう、自分に自信があるんか? そこのところはよう分からんのやけど、普通、女性の場合って、こう自分から好きになっても、ストレートに直にハッキリとは告白ってできんもんやろ? だけど、その女性は和也に告ってきたってわけで、逆に言えば心が強いんとちゃうんかな? なぁ、和也、確かに世の中には告白の返事でショックを受ける女性もいると思うねんけど、案外、断られてもサッパリしている女性やっておんねんで。逆に、その女性はそういうタイプなのかもしれへんしな」

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