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ー波乱ー27

「じゃあ、やっぱり、待ってもらって良かったのかもな。明日からさ、その子の様子を見てみて、雄介の言う通り、サッパリとした性格の女性だったら、断った方がいいのかもな」 「ああ、それが一番無難なのかもしれへんな」  和也はさっきまで作り笑いしかできなかったようだが、とりあえず話をしてみて良かったと思っているのだろう。素直な笑顔を雄介や望へと向けていた。 「望の言う通り、雄介に相談してみて良かったみたいだな」  和也は、そう子供みたいないつもの笑顔で隣にいる望へと微笑みかける。 「和也がそういうくらいだから、スッキリしたみたいだし、とりあえず良かったな……あとは……」 「新城颯斗の方かぁー!」  そう言うと、和也と望はほぼ同時にため息を吐く。 「なんや、そっちの方が深刻なんかいな?」 「ああ、まぁな」 「そうだ……」  和也は再びため息を吐くと、頬を膨らませて疲れたかのように肩を落とす。 「さっきもさ、チョロっとは話したけど、どうしたらいいと思う? 言葉じゃ全くもって勝てねぇし、むしろ、向こうの方が余裕あるって感じだしな。まぁ、当然だけど暴力で解決しようなんて思ってもいないし」  その和也の言葉に、雄介は目を丸くしていた。 「はぁ!? 和也でも勝てへんのか!?」 「ああ、全くもって俺の言葉に対して、アイツの場合にはさらに上をいくって感じなのかな? 俺の方は本気で嫌だって言ってるのに、上手いようにこう言葉を拾って、プラス思考に持ってかれちまうし、それが、すっげー悔しいし、腹が立つんだよなぁ」 「しかし、和也でも言葉じゃあ歯が立たないっていうことは、俺でさえも怪ゆいって感じやな? 俺だって、結構口の方は達者やって思うとるけど、まぁ、そこは和也並ってことやからな」 「……って、そこ、自慢げに言う所なのかよ」  そう望は小さな声で突っ込みを入れる。 「まぁ、そこは雄介に話を聞いてもらうだけでいいよ……あとは俺の問題だしな」 「ほら、また言うー! さっきから言うとるやろ? 一人で問題を抱え込むなっちゅうてんねんって……そりゃ、確かに俺に話すのは無駄なことなのかもしれへんねんけど、望がさっき言うてたように、可能性はゼロではないんやで……せやろ?」  そう言うと、雄介はいつもとは違い、和也の言葉に真剣に答えている。いや、むしろ真剣に答えたいからこそ、今の自分の心の中にある言葉を曝け出しているのだろう。 「和也ー、俺らはマジにお前の相談に乗ってるんだからさ、まずお前が先に諦めるんじゃねぇよ。本気で俺らがお前のこと、心配してんのが分からないのか!?」  望はそう言いながら真剣に和也のことを見つめる。 「望たちが本気なのは分かってる。だけど、アイツは半端なく言葉が巧みなんだぜ。俺たち束になってかかっても、なんか勝ち目が無さそうな気がするんだよな」

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