822 / 1491
ー波乱ー28
望は病室でイチャつく和也と裕実を見て、ため息をつくと、同時に雄介の方にちらりと顔を向けた。
すると、雄介は望のその視線に気付いたのだろう。視線が合うと、望に笑顔を向けながら、
「何気に和也と裕実のことが羨ましいんとちゃう?」
と、小さな声で言った。
「ば、ばーか……そんなんじゃねぇよ」
望はすぐに雄介から視線を外し、反対側へと顔を向けてしまった。
「望……嘘つくなや。嘘だって、もう顔に出とるで。今の望の顔、真っ赤やったしな。確かになぁー、和也と裕実見てると羨ましいって俺も思うわ。だって、俺らは最近、キスもしてへんしなぁ。流石にそろそろしたい思うねんけど、アカンか?」
その雄介の言葉に、返事しない望。
「なぁ、望? こう、望が最近イライラしてんのは、キスできてないからなんちゃう? 欲求不満やから、イライラしてるんとちゃうの?」
今まで雄介の言葉に黙っていた望だったが、急に雄介の方に顔を向けて、
「あー! もう! 違う! そこは絶対に違うんだからな……」
最初は強く言っていた望だったが、急に自信をなくしたのか、最後の方は小さな声で言った。
そんな望の態度で、何かを悟った雄介は安心したように笑みを浮かべ、近くにあった望の手首を取り、少し腕に力を入れて引き寄せた。雄介が力を入れて望を引き寄せたことで、望はバランスを崩し、ちょうど雄介の体の中にすっぽりと収まる感じになった。
「久々の望の温もりだわぁ。俺はめっちゃ安心する感じがすんねんけど、望はどんな感じなん?」
その雄介の質問に、やはり恥ずかしいのか答えずにいる望。しかし、望も久しぶりに恋人の温もりを感じているようで、大人しくそこに収まっている様子から、満足しているのかもしれない。
だが、今のこの四人には、こんなふうに恋人同士でまったりとしている場合ではないような気がする。
「雄介……確かに嬉しいんだけどさ、今はこんなことしてる場合じゃ……ないんだけどな」 「……え? あ、せやったな。ホンマはもっと望とこうイチャつきたかったんやけど……確かに望の言う通りやんなぁ」
雄介は仕方なさそうに望の手を離し、
「和也……裕実も来て、四人集まったんやし、本題に入ろうや?」
今までキスを交わしていた和也と裕実だったが、雄介の言葉が耳に入ったのか、和也は雄介の方に視線を向け、
「そうだったな……」
ともだちにシェアしよう!