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ー波乱ー29

 和也は裕実の手を掴むと、椅子を持ってきて裕実を隣に座らせた。 「ほんで、新城って言うたっけ? 今、和也のことを狙ってるっていう人物は……」 「ああ、うん、そう。本当にあいつから逃げる方法はないのかな? しかも、あいつはさ、裕実と俺の関係を知ってるにも関わらず、俺に言い寄ってるってことなんだよなぁ」 「和也さん! 僕にその人の様子を見させていただきませんか? そしたら、何かわかるかもしれませんよ」 「あ、それ、いいかもな! お前って変なところ気づくし、研修期間が終わったら、あいつ、お前と組むようなこと言ってたしな……それから作戦立てても遅くなさそうだし。まぁ、多分、その間少しはちょっかい出されるかもしれねぇけど。でもなぁ、なんでかな? あいつって俺に本気っていうのか伝わってこないっていうのか、なんていうのか? ただふざけてるとも見えるんだよな……なんでかな?」  やっと和也は冷静になり、いつもの自分を取り戻して颯斗の分析を始める。 「本当にあいつは俺のこと好きなのかな? って思うところがたまにあるんだよな。本気ならさ、普通、仕事中でも何か仕掛けてこないか? しかも、もっと何かこうアピールしてきてもいいんじゃないかな? って思うんだけどなぁ。確かに仕事中にはそういうことしてほしくないんだけどさ、なんていうのか……愛情? んー、何かが違う感じがするんだけどな……」 「ま、そこのところはまだわかってないってことなんだろ? それなら、裕実に任せてみたらいいんじゃねぇのか? 裕実には人を分析するような力があるみたいだからさ」 「やっぱり、見破られてました?」 「……って、前に言ってなかったか? ウチの親父の下で働いてたとも言ってたし、その親父がお前の能力に気づいてたんだ……俺にだってわかってるさ。気づいてないのは鈍感な和也だけなんじゃねぇのか?」 「はぁ!? 何言ってんだ? 裕実がなんだって? 何の能力があるって? もう一度、詳しく教えてくれよー」  本当に和也は何もわかっていないのか、望と裕実のことを交互に見つめている。  そんな和也の行動に、広い裕実と望はクスリと笑った。 「マジで和也はそのことについて気づいてねぇのか!?」  そう言いながらも、望は笑い続ける。 「……って、俺も和也同様にわからへんねんけどな。え? 裕実が何だっていうん?」 「って、二人とも、変なとこ鈍感なんだな……な、裕実……」  望は何かを伺うように裕実へと話を振った。

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