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ー波乱ー30

「気づいてないようなら、言う必要はないと思うのですけどね。まぁ、気づいてしまっている望さん! お二人にはヒントくらいは出してあげてもいいのではないんでしょうか?」 「……って、これでも俺の方は十分ヒントを出してるつもりなんだけどな。まぁ、少なくとも、裕実はそんなにドジじゃないってことなのか?」  望はまだクスリとしている。望は和也や雄介にはあまり言葉で勝ったことがないので、今は優越感に浸っているようだ。望にとっては久しぶりに楽しそうだ。  そんな時、食事の時間になったのか、雄介の前に食事が運ばれてくる。 「こんな時に飯の時間なんかいな。今はそんなに食べる気しないんだけどな」  そう意味ありげに言う雄介。 「飯はちゃんと食えよ。食わなきゃ……?」  望が最後まで雄介に何か言おうとした時、和也の視線を感じた。 「そろそろ、俺たちの方はお邪魔様って感じかな?」  和也はニヤニヤとしながら言う。和也と裕実は雄介が言いたいことがわかったらしく、そう言っている。 「……ってな。な、何言ってんだよー。まだ、この事について話終わってないだろうがー」 「顔を真っ赤にさせて動揺してるってことは、そういうことなんだろ? たまには二人きりになるのもいいんじゃねぇ? お二人さんはどんくらいイチャイチャしてなかったのかなぁ?」  話が終わると同時に、いつもの調子に戻った和也は完全にふざけモードになっている。 「どれくらいやったかな? 二週間? もう、軽く二週間は望とキスとかしてなかったと思うわぁ」 「それを俺に振るんじゃねぇよ……知るかっ! 二週間だろうと三週間だろうと……イチャつかなくても何とかなるっていうの!」 「な、それ、望……本気で言ってるん?」  そう、少し寂しげに言う雄介。  さすがの望も、そんな雄介の寂しい感じに気づいたのだろうか。望は瞳を宙に浮かせて、和也の方に視線を向けた。 「望……それを答えるのは俺じゃねぇよ。それを答えてあげるのは望の方だろ? さて、本気で俺たちの方はお邪魔様って感じみたいだから、帰るぞ……」  和也はそう言うと、裕実の腕を掴んで雄介の病室を出て行った。 「……ったく。いいタイミングで出て行きやがって……」  望は小さな声でそう言いながらため息を吐く。 「ほんで、望……答えは?」  雄介は真剣な瞳で望のことを見つめる。その痛いほどの視線に望が気づかないわけがない。 「あ、それはだな……」  望は久々に雄介と二人きりになったからか、顔を俯かせた。  きっと、あまりにも久々すぎて、まともに雄介の顔を見ていられないという感じなのだろう。

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