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ー波乱ー32
「はぁー、めっちゃ、望のおかげでお腹いっぱいやわぁ」
「じゃあ、これ、置いてくるな」
「ありがとうな」
「今は仕方ないことだろ?」
望はそう言うと、雄介が食べた食器を片付けに向かう。
食べ終えた食器を置きに行き、再び雄介がいる病室へ戻ってくる望。
「もう、あと三十分くらいかな? 俺がここに居られるのはさ」
「もう、それしかないん?」
「仕方ねぇだろ? もう、面会時間が終わる時間なんだからさ」
そう、無意識なのか本音なのかわからないが、望は寂しそうに口にする。
「ほな、望とキスしたい」
望もそろそろ雄介不足の限界だったのだろうか。その雄介の言葉に小さな声で、
「俺も……」
と口にする。
その望の言葉に雄介が反応しないわけがない。
「今、なんか言うたか?」
「ん? あ、それか……聴こえてなかったんだったらいい」
望はそう言うと、急に雄介から視線を逸らしてしまう。正確には、ぷいっと顔を背けたのだ。
その望の反応に気付いた雄介は、くすりと笑うと望の手首を掴み、望の体を自分の方へと引き寄せる。
「望も俺と同じ気持ちみたいやな。な、もう、これ以上は何も言わんし、せやから、大人しく望とキスだけしたい……」
望はその雄介の言葉に顔を赤くしながら、雄介の方に顔を向けると、瞳を閉じる。
それを合図に雄介はもっと望の体を自分の方に引き寄せ、唇を重ねる。
もう望が掛けている眼鏡には慣れたということだろうか。雄介は望の眼鏡を外さずに唇を重ねることが簡単になったようだ。
キスをし、それでも望不足だった雄介は今度、望の体をギュッと抱き締める。
「ホンマに俺は望のことが好きなんやって……ずっとずっと、俺は望とおりたいって思うておるしな」
今日の望はいつものように拒否しない。寧ろ望の方も雄介とのこんな時間を待っていたのだろう。
さっきもこうやって雄介に抱きしめられたのだが、その時は和也達がいたためか、心の中で焦ったのだろう。今はもう二人だけの空間なので、ゆっくりとした時を過ごしている望と雄介。
しかし、面会時間は迫ってきているという焦りはある。恋人との時間というのはあっという間に過ぎてしまうものだ。もし魔法使いが現れたなら、時間を止めてほしいと思うだろう。
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