842 / 964

ー波乱ー48

 その和也の行動に、颯斗はクスリと笑うと、今日は和也に何も仕掛けずにロッカールームへと消えていった。  その颯斗の意外な行動に、逆に和也の方が何が起きたのか分からず、キョロキョロとしてしまったほどだ。 「今日はアイツに何もされなかったみたいだな?」 「ああ、いいんだか……悪いんだか」  和也はそう言いながら、再びソファへと腰を下ろす。  それから、お昼までは颯斗が和也に何か仕掛けてくることはなかったらしい。 「なんか……変な感じ……」  お昼になると、食堂に入った二人は、中庭の見えるカウンター席で隣に並んでご飯を食べ始める。 「むしろ、仕掛けてこない方がいいんじゃねぇのか?」 「そりゃ、そうだけどよ。なんか今まで仕掛けられてきたから、変な感じっていうか、拍子抜けって感じかな?」 「まあ、そこはそうなんだろうけどさ……」  望はそう言いながら、窓の外を眺める。  今日は晴れて青空が広がっている。 「まあ、いいんじゃねぇの? 今の空のように清々しい感じなんだしさ」  和也はその望の言葉にクスリと笑い、 「望にしては珍しいこと言うな」 「なんだよ……その珍しいっていうのは」 「普段、お前、そんなこと言わねぇだろうが……」 「俺、そういうこと言わなかったか?」 「望の口からそんなこと、聞いたことねぇぞ……」  そう、和也は口を尖らせながら言う。 「そこまで言い切らなくてもいいだろうが……」  今度、望は和也とは反対側を向いてしまうが、次の瞬間には二人で顔を合わせてクスリとしていた。  二人とも、お互いの性格を知っているからこそ、何か通じるものがあったのだろう。だからこそ、お互い言い合いしていても笑い合えるのかもしれない。 「ま、いいや……早く飯食っちまおうぜ。時間なくなっちまうしな」 「……ったく、お前といると本当に食うのが遅くなっちまうんだよな」  そう言い始める望だが、 「そう言うか? こんなに和也君が相手してるのに?」 「はいはい……」  望はそんな和也を相手したくないのか、生返事をしながら、空になった食器を片付けに向かう。

ともだちにシェアしよう!