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ー波乱ー53

 雄介はやはり、和也のおかしな行動に気付いたのであろう。さっきから望と一緒に和也の行動を見ているのだが、急に和也が病室へと入っていく姿が目に入ってきた。 「ホンマ……あいつ、どないしたんやろ? 今の時間に病室の方に用事があんのか?」 「いやぁ……確か今の時間は病室の方には用事はなかったはずだぜ。それに、アイツの知り合いが入院してるって話も聞いてないしな。例え俺が知らない人物だったとしても、もう昼休みが終わる時間だし、アイツがお見舞いに行くような時間でもないだろうしな」  そんなことを話していると、すぐに和也が一つ目の病室から出てきた。そして、その病室の前で頭を下げている。  その和也の様子に首をかしげる望と雄介。  そして、次の病室にも入っていったが、その病室からも数分もしないうちに出てきた。それを繰り返す和也。  だが、次に入った病室からは、なかなか和也が出てこない。 「まだ、出てけぇへんな?」 「ああ……」  望は雄介の問いに心配そうに返事をし、その病室の方へ視線を向けた。  ふっと望は腕時計に視線を向けると、もう十三時を過ぎていた。 「やべぇっ! もうこんな時間だったのかよっ! 十四時半から今日は手術が入ってるんだぞ!」 「はぁ!? それなら早よ和也が戻って来ないとアカンやんか!」  望の言葉に、雄介も焦り始めたのか、慌てた様子で望の方へと視線を向ける。 「ああ、分かってる」  望は少し考えてから、 「雄介はそこで待っていてくれよ……俺、あの病室に行って様子を見てくるからさ」 「ちょ、それは多分アカンような気がすんねんけど?」 「はぁ!? 何言ってんだ? 俺はただ様子を見に行くだけで……」 「いやな……」  雄介はそこで何故か言葉を詰まらせてしまった。 「なんやろ? なんか嫌な予感がすんねんな。それに、望のことを危険な目に合わせたくないし」 「かと言って、今のお前に和也のことを助けられる訳がねぇだろうが……」  望にそこまで言われると、悔しかったのか雄介は歯を食いしばりながら、車椅子の肘掛けを強く握りしめた。 「ほな、望……様子だけ見てきてな。ただし、何か危ない目に合いそうになったら、即出てくるんだからな」 「ああ、分かってる。俺はあくまでただの様子見だしな。ってかさ、お前は逆にこの知らない人の病室に入ることは出来ねぇだろ? 無関係な奴が入るのは変だしな」

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