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ー波乱ー81

 それから数週間が経ち、雄介の足は完全に治ったようで、ついに退院の日を迎える。  雄介は、望の仕事が終わるのを待ちながら、夕方には荷物をまとめ、望が病室に来るのを待っていた。  そして、望は夕方の六時過ぎに雄介の病室を訪れ、二人は一緒に病院を出て、望の車が置いてある駐車場へと向かった。  久しぶりに外に出られた雄介は、荷物を望の車に積み込むと、体を伸ばす。 「やっぱ、外はええもんやんなぁ」 「久しぶりに出られると、そうなのかもな」  望は素っ気ない返事をしながら、先に車に乗り込む。  そんな望の様子に、雄介は首を傾げながら車に乗り込んだ。 「望の車に乗るのも久しぶりって感じやな。ほんま、望の車は流石に高級車だけあって乗り心地がええわ」 「別に高級車なんて乗りたくねぇんだけどさ……ただ、親父がな。医者でもあって、医者の息子なんだからって言って買い渡してくれたんだよ。乗るしかねぇだろ?」 「ま、確かにな。せや! 望のお親父さんで思い出したんやけど、お前の親父さんってめっちゃええ人なんやな! 俺が入院してる間、二、三日に一回は俺の病室に来て、何か話していってたで」  その雄介の何気ない言葉を聞いて、望は急に顔色を変え、何故か雄介を睨み上げた。 「ちょ、どないしたん? めっちゃ怖いねんけど?」  雄介が完全に引くくらいの表情をしている望。 「俺がこんなに機嫌悪い理由、知ってるか!? そうだよ! 今言ってた親父のせいなんだよ! 帰りにさ……親父の野郎が俺たちの部屋に入ってきて、今、お前が言ってたことを言ってきたんだよ! その話を聞いて、俺がどれだけ腹が立ったか分かるか!? 俺が担当してる患者さんの話ならともかく! 俺の恋人に近付くなんてマジで信じらんねぇんだけど!」 「……へ? そういうもんなんか?」 「ああ……そういうもんなんだよ……」 「ホンマに!?」 「何が言いたいんだ?」  望はそう言いながら、雄介を睨み上げた。 「俺の方は別にええと思うねんけどな。あの親父さん、俺と望が恋人同士って知ってるんやろ? ほんなら、なおさらええことなんちゃう? って思うねんけどなぁ」  その雄介の言葉に、今度は望が不思議そうな表情をしながら雄介を見上げた。 「お前の親父さん、別に俺の病室に来て意地悪なことしていったわけでもなかったしな。寧ろ、俺のことを心配して声をかけに来てくれてたって感じやったし。ってことは、ある意味、俺らの関係を認めてくれてるってことやろ? 望と一緒にいられるんやったら、今から望のお親父さんと仲良くしておいた方がええと思うんやけどな……」

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