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ー波乱ー83

「おう、もう……出てきてたんか?」 「まぁな……だって、俺はシャワー……ん……お、おい……な、何してんだよー」  と言いながらも望は幸せそうな表情をしていた。 「相変わらず拭き方が雑やなぁーって思うてな」 「いいんだよ」  そう望は小さな声で言うものの、その声は雄介の耳にも届いていたようで、雄介はその言葉に反応したのか微笑みながら、望の髪を拭き終えると再び料理を作り始め、出来た料理をテーブルへと運んでくる。  しかし、雄介が作る料理というのは毎回、本当に美味しそうな匂いがして食欲をそそる。  望はそれだけでもお腹いっぱいになりそうなのだけど、やはり、そこは久しぶりに雄介の料理も堪能したい所だろう。 「ほな、食うか?」 「ああ……」  二人は両手を合わせると「いただきます」と声を揃え、その言葉だけでも笑みが溢れたようだ。  久しぶりに望の家で一緒にご飯を食べる二人。  自然と会話の方も弾んでいる。  それに伴って望は久しぶりに雄介との二人だけの空間を楽しんでいるようだ。 「はぁー、ホンマに久しぶりに美味いもん食ったって感じがするわぁ……ホンマ、病院食って薄味やかなんか不味いしな。 せやけど、栄養の方は満点なんやし、食う時には食っておったんやけど……」 「食堂の方のご飯はそんなに不味くはないんだけどな……確か、あそこは病院食と職員達のご飯は一緒に作っていたと思うんだけどな……でも、まぁ、厨房は一緒なだけで、釜とかは違ってるのかもな」 「そうなん?」 「ほら、流石に場所だってそんなに取れないだろ?」 「そんなとこまで望も親父さんっていう人は考えておるんか?」 「まぁな……そういう事なんだろ?」  そこは何故か素っ気なく答える望。 「そう言うって事は、望は自分の親父さんの事、認めてるんとちゃうん?」 「さぁな……ま、一応、親父の凄さは知ってるつもりさ……ただ、俺がそれを認めちゃうと親父の奴、調子に乗るからさ。 ってか、今は親父の話なんかどうでもいいだろ? 今はやっと二人きりなんだからさ……」 「まぁ、そうやねんけど……。 ところでな……望の親父さんは今どこに居るん? ここは親父さんの家なんやろ?」 「正確には先祖代々の家って言ったらいいのかな? 親父はまだ仮に日本に来ているだけだから、病院の自分の部屋の方にいんじゃねぇのか? お袋はまだアメリカにいるんだろうしさ……」  望はお腹いっぱいになると手を合わせる。 「そうなんかいなーって、望の親父さん、自分の家に戻って来ぉへんの?」 「あんなぁ、そろそろマジで親父の話辞めねぇか? 食べ終わったんだから、片付けるぞ!」 「あ、まぁ……せやったな」

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