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ー波乱ー115

「分かったよ。和也は恋人なら、恋人のこと、もっと分かってやれって言いたいんだろ? 分かってる……俺もアイツのこと、本気で好きだからさ。だから、冷静じゃいられなくなっちまうのかもしれねぇしな。とりあえず、明日は帰って、もう一度、雄介と話してみるな……和也は明日いなくてもいい、これは俺たちの問題だからさ……俺、一人で解決してくるよ」 「ああ……」  そう和也は一言だけ言うと、急に裕実と望の間に座ってくる。 「おい……狭いんだよ」 「ん? 今日は一人ハーレム!」  そんなことを言う和也に対して、望も裕実も一人一発ずつ和也の頭を叩くのだ。 「何も二人で叩かなくてもいいだろうが……まったく、痛ぇな!」 「叩かれて当たり前だ!」 「叩かれて当たり前です!」  そう和也の言葉に、二人は同時に同じことを言うのだ。 「お前さぁ、裕実が目の前にいるのによくそんなことできるよな?」 「そうですよー、望さんには雄介さんがいるんですからねー!」  そこまで言うと、二人は和也とは反対側を向いてしまう。 「あー、俺的には話は終わったわけだし、場を和ませてやってるのに、なんでこういうことに関しては気付いてくれねぇのかなぁ?」 「二兎を追う者は一兎をも得ず……まさにその言葉の通りなんだと思いますよ。ねぇ、望さん……」 「そういうことだ……」  裕実と望は顔を合わせると、笑顔になる。 「はいはい……」  さすがの和也も、二人にタッグを組まれると負けてしまったようで、手を顔に当てて「負けました」と降参しているようだ。 「ま、いいや……望は今日泊まっていくんだろ? ならさ、ソファでいいか?」 「そこは、和也さんがソファで寝てくださいよ。今日はそんな危険な狼さんの近くで寝るわけにはいかないですからねー」 「ああ、確かに裕実の言う通りだな。さっき、ハーレムとか言ってたし、今日の和也は危険な香りしかしねぇからな……」 「だぁー! もう、分かったから、二人はベッド寝ろ!」 「えー! 寝ろ……ですか?」  和也は急に立ち上がると、二人の方に視線を向けて、 「はいはい……二人はベッド使ってくださいね」 「和也……それだと棒読みで心がこもってないんだけど」 「望さんの言う通りですよー」 「……ったく」  和也は小さな声で呆れたように言うと、頭を下げて、 「どうぞ、ベッドは二人のお姫様お使いくださいませ」  そう丁寧に言うのだ。  その和也の言葉に、裕実と望はクスリと笑う。  そう、いつも和也にはやられっぱなしの二人なのだが、二人でかかれば勝てるっていうのが分かったのか、いつもの仕返しとばかりに言うのだ。

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