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ー波乱ー119
一応、業務的なことだけ終わらせると、
「また、来週のこの時間に来てくださいね」
とだけ雄介に告げ、彼を帰すのだった。
確かに望と雄介は喧嘩をしているのだが、望は一方的に話をして雄介を帰してしまった。
雄介は診察室から出ると、ため息をつく。
「確かにな……望とは喧嘩してるからって、あんな態度はないやんか……それにしても……」
そう独り言を呟いた後、雄介はもう一度ため息をついて病院を後にする。
そして昨日、望は和也と約束をしたこともあり、自分の家へと戻る。しかし、望の中では何かが引っかかっているのか、家の駐車場に着いてもそのまま車の中で止まってしまっている。
望はその車の中で息を吐く。
確かに、いつまでもここにいても話し合いは解決しない。だからなのか、意を決したように車から降り、何事もなかったかのように家の中へと入っていく。
部屋に入ると、電気はついていて雄介がいるのは間違いないのだが、なんだか気配がしないような気がするのは気のせいだろうか?
普段なら、雄介が休みの日は笑顔で出迎えてくれるのに、今日はそれもない。
望は靴を脱ぎ、ゆっくりとリビングの方へ向かう。
自分の家なのに、何か落ち着かない感じがするのは気のせいだろうか?
リビングに入ると、雄介はソファに座り、テレビを見上げていた。
望はどうにかいつもの自分を取り戻そうと努力している様子だった。そして、雄介に向かって笑顔を向けると、
「ただいま……」
と言った。すると、雄介は一瞬驚いたようだったが、すぐにいつもの笑顔で、
「おかえり……」
と答える。
「帰ってたんか? テレビの音が大きくて気づかへんかったわぁ」
「あ、ああ、まあな……」
「ほな、飯にするし、鞄とか部屋に置いてきぃな」
「あ、ああ……そうだな。それと、部屋着に着替えてくるな……」
望はそう言うと、二階にある自分の部屋へと向かい着替えに行った。
しかし、今の会話は自然でありながら、どこか不自然に感じられた。
やはり二人はまだ、一昨日の喧嘩を引きずっているのだろう。
いや、望には何かもう一つ理由があるようだ。
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