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ー波乱ー120
望は部屋着に着替えて下へ行くと、相変わらずテーブルの上には雄介が作った料理が並べられていた。
「相変わらずすごいよな? お前が作る料理って、栄養がありそうだ」
「そりゃまぁ……愛情も込もっておるしな」
その雄介の言葉に、望は一瞬間を空けたが、
「あ、ああ! まぁ、そうだよな」
そう、慌てたように答える。
やはり、まだ完全に仲直りしたわけではないので、会話がうまく弾むわけもなく、ギクシャクした感じがあった。
それから二人の間には、会話がなかった。
きっと、どちらも一昨日の喧嘩に通じる言葉を言ってしまいそうで、話すことができなかったのであろう。
望は食事を終えると、
「俺、まだ仕事があるからさ……書斎に行ってるな」
「……書斎?」
「あ、雄介は知らなかったんだっけ? 一階の奥の部屋に書斎があるんだよ……そこには、世界中の医学書があるんだ」
「そんなのがあったんやな」
「ああ、まぁ……だから、お前は好きにしてていいぞ」
「あ、ああ……おう……」
確かに、望と一緒に住み始めてから、雄介は望の家で自由にしていたのだが、改めてそう言われると何となく変な感じがしていた。
「じゃあ、後はよろしく……」
望はそれだけ言って、部屋を出て行ってしまう。
いつもと違う行動をしている望。
いつもなら、帰宅してご飯を食べたらお風呂に入る時間なのに、今日は書斎に用事があるらしく、そちらに行ってしまったようだ。
一昨日の喧嘩がまだ響いているのかは分からないが、自然でありながらも不自然な行動を取っているところが気になる。
確かに望の性格からすると、そういう話を望からすることはない。だから、まぁ、それは自然と言えば自然なのだが。
雄介は食事を終えると、さっき望が言っていた書斎に足を運んでみた。望は「自由にしてていい」と言ったのだから、雄介がどう行動しようと自由だ。
雄介が書斎へ通じるドアをゆっくりと開けると、仕事をすると言っていたはずなのに、そこには電気さえ点いていなかった。
雄介は自分が入れるくらいまでドアを開け、望がどこにいるのかを探す。
雄介はこの部屋に一度も入ったことがなかった。だから、望が今どこにいるのか見当がつかなかったが、すぐに望を見つけることができた。ドアから入って目の前には大きな窓があり、窓からは満月がまん丸に見えていた。月の逆光で、人影が浮かび上がっていた。
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