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ー波乱ー121
その形からしても望がこの部屋にいると分かっていたのだから、その人影は望だろう。
雄介はその人影にホッとしたのも束の間、その人影の上の方に煙が見える。
「……へ? 煙!?」
それを見た雄介は慌てたように、
「え、あ……まさか、火事やないやろうな?」
雄介は慌てて部屋の電気を点けると、やっとその煙の原因が分かったらしく、再びホッとする。
「なんや……煙草の煙やったんかいな」
そんなことにホッとしたのもつかの間、雄介は望の元へと向かう。
「……って、望が煙草吸うてるってどういうことやねん!」
「……って、そこはそんなに怒るところじゃねぇだろ? 俺はもう未成年じゃねぇんだからな」
「ま、そこは……確かにな」
「まさか……その……俺と本気で……その……」
そう言って、雄介もこの前の喧嘩の話をしようとするが、どうしても『別れる』という言葉を雄介は言いたくなさそうだ。
望は吸い終えた煙草を灰皿で消すと、
「さぁ、それはどうなのかな?」
そう言って、望は椅子から立ち上がる。
「それに、望がこの部屋に籠ったんは、ここで仕事するためじゃなかったん? そもそも暗いまんまで何してたん?」
「俺が自分の家で何をしてようと勝手だろうが……お前にそんなこと言う必要はねぇだろ?」
昨日、和也の家で「明日雄介とは仲直りする」と言っていたのに、このままでは話は平行線のままだ。
「た、確かにそうやねんけど……」
「だろ? なら、俺がここで何をしてようがいいじゃねぇか」
「あ、ああ……まぁ……」
ここは確かに望の家ではあるのだから、望が言ってることは正しい。
「なぁ、望……話は変わんねんけど……この前、言ってたことはホンマのことなん?」
雄介はついでとばかりに切なそうな表情をし、望のことを見上げる。
望は今その話をしに帰って来たということもあるのだから、その話になるのは覚悟して再び椅子へと座る。
「それか……」
そう言って、望はその話に対して動揺することもなく、机の上で腕を組んで顔を俯かせる。
「そのことをさ……和也に相談したんだよ……そしたら、雄介の気持ちも分かってやれよ……って言われてさ……だから、お前の好きなようにすればいいんじゃねぇのか? 俺はもうこれ以上のことは何も言わない。それに、『別れよう』って言ったのは、その場の勢いみたいなもんだったし。だから、ハッキリ言ってそこは本気で思っちゃいねぇから安心しろ……それに、あの時お前に言っていたはずだ。嫌いになって別れるんじゃない。ってな……ま、だから、そういうことだ」
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