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ー波乱ー123

「いいや……俺も悪いやろ? あんな弱気なこと、言ってまったんやから」 「そんな雄介でも、俺はあの時受け入れるって言えば良かったんだよ」 「まぁ、今回はお互い様ってところやんな」 「ああ、そうだな……これ以上この話を続けても、また喧嘩になるだけだしさ」  望は安心したかのように、さっき座っていた椅子に腰掛け、そこから見えている月を眺める。  やはりと言うべきか、本当に望はこういう話が苦手だ。話を終えた途端に視線を逸らしてしまったのだから。  雄介はそんな望の姿に微笑むと、そっと望に近づき、 「ほなら……な、望?」  雄介は望の前に立膝の格好で座り、望に視線を向ける。 「な、なんだよ……急に……」  言葉を詰まらせた望が顔を赤らめているのは、雄介が何か言いたい、あるいはしたいことに気づいているからかもしれない。  望はひと息吐くと、 「分かったよ……」  その望の相変わらずの態度に、雄介は微笑むと、月をバックにキスを交わす。  久しぶりのキスをした二人は、甘くて懐かしいキスを楽しんだのだろう。 「それと……望な。仲直りのお守り、ロケットペンダントにするつもりやったんやけど、ドッグタグの方にしといたわぁ。俺のには望の名前が入っとるドッグタグ。望には俺の名前が入っとるドッグタグな……これやったら、離れてても近くにいるって感じせぇへん?」  そう雄介は言って、今日病院の帰りにデパートに寄って買ってきたものを、望の首にかける。  ただ、望は初めて雄介からプレゼントをもらうので、どうしていいのか分からなかったらしい。  普通の女性ならば、相手の男性にプレゼントをもらったら喜ぶのだろうが、望にとってプレゼントをもらうのはほとんど初めてに近い。どう反応したらいいのか分からない様子だ。しかも、雄介の名前入りのドッグタグとなれば、気恥ずかしさも混ざっているのだろう。 「よし! これで、ええな!」 「あ、え? おう……」  望はとりあえず首にかけてもらったドッグタグを手に取り、確かに雄介の言う通りローマ字で雄介の名前が彫ってあるのを確認する。 「な、今日は一緒に風呂に入ろうか?」 「それは嫌だ……それとこれとは話別だからな」 「ちょ、はい!? そんなにハッキリ言わんでもええやんかぁ」 「お前と入るとろくなことにならないからな」  望はそう言うと、徐に立ち上がり、雄介から離れていく。  そして、再び望は険しい顔をして雄介を見上げた。

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