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ー波乱ー126

 そう、これ以上望に聞いても、望のことだから追及すればするほど怒らせてしまう可能性がある。 「前に和也が、望は俺と付き合い出してからは吸わなくなったって言っておったけど……。それで今回は喧嘩しておって、暫く俺と離れておったからなんか? なるほど、そういうことやったんかいな」  そう言うと雄介は答えが分かり、再び望の頭の上に手を回す。 「口寂しかったってことなんかいな」 「それと、もう一つ!」 「もう一つ!?」 「今日……お前さ……あの……女性と……」 「あ、あぁ! あれな……嫉妬したからっていうのもあったんかいな?」  雄介がそう振ると、望は完全に反対側を向いてしまう。 「なら、もう俺と仲直りしたんやから、煙草は吸わん?」 「それは分からないな……雄介が嫌だって言うんだったら吸わないようにするけど……」 「ほなら、吸わんで欲しい。煙草はな……病気にもなるし……火事の原因の一つやしな。結構あるんやで、煙草の不始末で火事っていうのは。口寂しくなってきたら……」  雄介がそこまで言うと、望は半身を起こして雄介の唇へと唇を重ねる。 「こういうことだろ?」 「あ、ああ……そういうことやんな。望からのキスならいくらでも欲しいって思うしな」  雄介は、自分の上に乗っている望の体を愛おしそうに抱き締める。 「お前、力入れすぎ……キツイって……」 「せやけど、俺は望のこと、離したくないもん」 「そんなことは分かってるんだけど……キツイんだって!」  望は雄介の腕の中から抜け出そうと、腕をベッドに着いて背中を反らせながら、雄介の腕の中から抜け出そうとしている。  その時、さっき雄介から貰ったドッグタグが月の光を反射させ、雄介の目にその光が入ってしまったようだ。その一瞬、雄介の腕の力が緩み、望はその隙をついて雄介の腕の中から抜け出す。 「今のは俺の勝ちだな……」 「今のは無しや、無し! そのドッグタグがな……月の光に反射して、その光が目に入って来ただけやし」 「それは言い訳だろ? さて、俺はマジで寝るぞ!」 「ほな、俺が子守唄……って……」 「うるさい! それは余計に眠れなくなるから辞めてくれよ」 「抱くことが出来ないんやったら、それくらいはええやろが」 「なら、腕枕」  そうぶっきらぼうに言う望だが、望にしては大分折れた方だろう。まあ、雄介にしては、ある意味嬉しい結果で終わったので、良しとしたようだ。

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