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ー波乱ー127

 そして次の日、望はいつものように雄介にご飯を作ってもらい、食べてから病院へ向かう。  やはり朝ごはんを食べてから行くと、気持ちが元気になる。いや、恋人に作ってもらったからかもしれない。  望は病院の駐車場に到着すると、車から降りて大空に向かって伸びをする。  もうすぐ春を迎える季節だ。  この病院の駐車場は広く、三分の一は職員用の駐車場で、残りの三分の二は患者やお見舞い客のための駐車場になっている。そして、その周りには桜の木が植えられており、まもなく咲こうとしている。 「もうすぐ、ここの桜も咲きそうだな……」  望はひとりそう呟きながら病院の方へ歩き出すが、背後から寒気を感じるような殺気を覚える。その瞬間、背後を振り返るが、人影ひとつ見当たらない。気のせいだと思い直す。  しかし、その殺気に危険を感じた望は足早に職員用の入口から病院に入り、自分の部屋に向かうと、鍵を閉めてしまった。  まだ和也は来ていない時間だが、先ほどの出来事で鍵を掛けたのだろう。荒い呼吸を整えながら、ソファに体を預けて座る望。  今の出来事が気のせいならいいが、もし本当に何かがあったとしたら――そう思うと、嫌な汗が額から流れ落ちてくる。  それからしばらくして、部屋のドアを強く叩く音が響き、望は体をビクッとさせる。そしてゆっくりとドアに近づき、 「だ、誰だ!?」  と低い声で問いかける。しかし次の瞬間、聞き慣れた声が返ってきた。 「おいおい、どうしちまったんだよ。鍵なんか閉めてさ。先に望が来てるときは、普通、鍵は閉めないだろ?」  その声にホッとし、望は急いでドアを開け、中に和也を引きずり込むようにして部屋に入れた。 「どうした? 何があったんだ?」  朝から不自然すぎる望の行動に、何かを察したのか、和也は顔色の悪い望に声を掛けた。 「いや、なんでもないんだけどさ……」 「なんでもないにしては、顔色が悪いぞ。それに普段はここに鍵を掛けたりしないだろ?」 「ああ、まあ……だけど、まだその出来事が確信ではないからさ」 「……確信?」  望の言葉を理解できない和也。とりあえず望を引っ張り起こしてソファに座らせ、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して望に投げ渡した。

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