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ー波乱ー130

「家の方は大丈夫みたいだな。雄介からは普通のメールしか来てなかったしな」 「じゃあ、今のところ被害に遭っているのはこの部屋だけってことになるのか?」 「そうみたいだな」  とりあえず望は落ち着くためにソファへと腰を下ろす。  そして、ひと息つくと、 「やっぱり、朝のは気のせいじゃなかったってことになるんだよな?」 「ああ、まぁ……そうだな。で、昼に帰ってきた時に鍵は?」 「慌ててたから閉めてなかったのかも……いや、いつも閉める癖なんかついてなかったしな」 「じゃあ、犯人はこの部屋に簡単に入れたってわけだ」 「そうか!? いや、簡単には入ることはできないと思うぜ。ここは医者と看護師の部屋がいっぱい並んでるフロアなんだぜ……それに俺たちがいる部屋は一番端なんだしさ。ここのフロアには同じようなドアがいくつもあるのに、他の部屋は騒ぎにはなってないわけだろ? ってことは、俺が目的でこの部屋に犯人は直接来たってことになるんじゃねぇのか? それに、防犯カメラが俺たちの真上にあって……もしかして、俺たちの部屋に入ってきた犯人はその防犯カメラに映ってるかもしれねぇぜ!」  望がそこまで言うと、和也は、 「あ、そうだ!」 「そうだよ! 防犯カメラ!」  望はすぐに行動を移し、ドアを開けた右上にある防犯カメラの方に視線を向ける。しかし、その防犯カメラはこのフロアの廊下を映しているわけではなく、何故か反対側を向いてしまっていた。それに息を吐く望。 「和也……ダメだ……カメラも無理だって……」 「はぁ!?」  それだけでは和也には通じていないのかもしれない。防犯カメラの状況を確認したのは望だけだ。ちゃんと説明してもらわないと理解できないところだろう。  望は犯人探しに絶望的になったのか、完全にソファへと体を預けてしまう。 「表にあるカメラさ……誰かに反対側を向かせられていたんだよな。だから、役に立たなかったよ」 「はぁ!?」  和也のその反応は当然だろう。 「マジかよ……」  そう望が絶望的になるのもわかる。 「とりあえず、今日の犯人探しはここまでだな……望は雄介がいる間は家に帰るんだろ?」 「ああ、雄介とは居られる時間は一緒にいたいしさ」 「ならさ、雄介が仕事復帰するまで、望の車で送り迎えしてもらえよ。あと、朝は俺が駐車場で望と会えば大丈夫だろ?」 「ああ、そうだな……ありがとう」 「友達が危ない目に遭いそうな感じなんだから、当たり前だろ? だから、気にすることじゃねぇよ」 「ああ……」 「じゃあ、先に着替えてこいよ」  その和也の言葉に望はロッカールームへと消えていく。  和也は望がロッカールームへと消えていくと、ソファへと寄りかかる。  そして、望が着替え終わった後に和也もロッカーへと向かい、今日はとりあえず帰っていくのだった。

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