927 / 951

ー波乱ー133

 次の日から、雄介が望の車を運転し、病院まで送り届けるようになった。そして、和也が来るまで待ってから、和也と望は病院へと向かうのが日課となっていた。  そのためか、この前のように殺気を感じることは一度もなかった。  そして明日は望の仕事が休みで、明後日からは雄介が仕事に出かけるという土曜日の夕方。望と和也は部屋のソファで話をしていた。 「まぁ、明日は休みだからいいとして、明後日からは望が一人で病院に行くことになるけど、大丈夫なのか? それに、その夜は雄介も家にいないんだろ?」 「ここ最近、何もなかったし、犯人も諦めたんじゃねぇのか?」 「いや、多分……ここ数日何もなかったのは、望に隙がなかったからだと思うぞ。俺と雄介が一緒にいてボディガードみたいになってたから、犯人は近づけなかったんじゃねぇか? もし俺が犯人だったら、やっぱり望が一人の時を狙うはずだよな」  和也は腕を組んで考え込む。 「明後日からも和也とは病院の駐車場で待ち合わせだろ? それなら、俺が一人になる時間ってのは行きと帰りの車の中だけだ。そうだったら、大丈夫だと思うんだけどな」 「まぁな。何かあったら携帯で連絡してくれれば、すぐに車を飛ばして行くからさ」 「車を飛ばして来るのはいいけど、警察に捕まったら意味ねぇからな」 「分かってるって……そういや、明日の夜は裕実が夜勤だったんだよなぁ。俺は久しぶりに一人の夜ってわけだ」  和也はすぐに話題を変え、明日の夜誰もいないことに項垂れているようだ。 「たまにはいいんじゃねぇのか? 誰もいない時を過ごすのも。きっと恋人の存在が、より愛おしく感じるかもしれねぇけどな」  そう望はからかうように言ったつもりだったが、 「ん? 望もそんなことを言うようになったんだ」 「はぁ!?……え? な、何か言ったか!?」 「焦ってるってことは、俺の言ってる意味、分かってるんだろ? まぁ、望も雄介がいないと寂しいって感じるようになったんだろ? そう思わなきゃ、さっきの言葉は出てこないよな?」  和也は余裕の表情を見せているのに対し、望は顔を真っ赤にしていた。 「甘い! 甘い! この前は裕実と望に負けたけど、望か裕実一人なら俺の方が強いしな。まだまだ、俺の方が一枚も二枚も上手ってことだな」  和也は自慢げに望の顔に近づいて言うが、望の方は悔しそうな表情を浮かべていた。

ともだちにシェアしよう!