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ー波乱ー135
「まぁ、これが望やったらな……別に嬉しいねんけど。もし、これが和也やったら、叩いとるとこやわぁ」
望はフッと息を吐くと、
「やっぱ、俺は和也や雄介には勝てねぇのかな?」
「さっきから勝つとか勝たないとかって、なんやねん」
「いやな……さっきも今の雄介みたいに仕掛けてみたんだけどさ、俺が負けたんだよ」
「まぁ、望の場合には夜の方も勝てへんけどな」
そう笑う雄介に対して、望はフッと笑い、小さな声で、
「……そうだな」
そう言うと、食器を流し台へ置いて、ソファへと腰を下ろす。
「ちょ、待って! 俺、燗に触るようなこと、なんか言うたか? それなら、謝るし」
雄介は望の後に付き、望が座ってしまったソファの後ろに立つと、手と手を合わせて困ったような、焦ったような表情で望を見つめる。
また、望はそんな雄介の姿に笑い始める。
「お前って騒がしい奴だよな? 上に行ったり、下に行ってみたりさ」
「そりゃ、望とそんな小さいことで喧嘩しとうないもん」
雄介はそう言いながら、望の隣へと腰を下ろす。
「……俺もだ」
今日はもう何回小さな声で言っただろうか? 小さな声でも、こう雄介の前では大分素直になってきているように思える。
やはり、この前の喧嘩が効いているのであろうか? あの時、少し離れてみて和也たちと話し、第三者の意見も聞いて、雄介がもっと大事な存在になったのかもしれない。
「……で、明日は何処に連れて行ってくれるんだ?」
「せやな? まぁ、先に言っとくけど、前回みたいに、俺が言った所はアカンっていうのはもう無しやからな」
「ああ、分かってる。本当にお前が好きな所でいいからな」
「なら……」
雄介は視線を天井へ向け、行きたい場所を考えるが、眉間に皺を寄せても行きたい所が出てこないようだ。
「なんだよー。自分から言っておいて、行きたい場所が出てこないのか?」
「ああ、まぁ……」
その雄介の言葉に、望は呆れたようにため息を吐く。
「ほなら、望は何処に行きたいん?」
「それはさっき言っただろ? 俺が行きたいと思った場所って、ろくな事が起きないから嫌なんだって。だから、俺は考えねぇよ」
「ほな、たまには体動かしたいし、そういう施設みたいなとこは?」
「それは、まだ、俺が許さない」
「ちょい、待ってぇな……今、俺が行きたい所やったらええって言うたばっかやんか!?」
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