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ー波乱ー132

望も車から降りると、雄介同様に体を伸ばした。 「やっぱ……まだ、流石に海は寒いよな?」 「まだまだ風は冷たいしなぁ。ま、気分転換にはええ場所なんとちゃう? 今は仕事のことは忘れて楽しもうや!」  雄介はそう言うと、望のことを軽々と持ち上げた。 「確かに寒いねんけど……こうしたら温かいんやろ?」 「え? あ、ま、まぁな……」  望は真っ赤な顔をしながらも、雄介を見上げた。  外と言っても、この時期の海には人がほとんどいない。むしろ静かすぎるくらいで、波が砂浜に押し寄せて、静かに音を立てているだけだ。 「なぁ、雄介……もう、足の方は痛くないのか?」 「ああ、まぁ……痛くはないかな? 今回は望のおかげで、大丈夫になれたしな!」  雄介はそう言うと、望を抱き上げたまま砂浜を歩き始めた。 「こうやって、望を抱き上げて歩けるくらいには、かなり回復したと思うてんねんけど」 「みたいだな。それなら良かったんだけど。ってさ、お前は俺のおかげだって言うけど、俺たちの仕事はただ体の修復を助けるだけで、あとは患者さん次第なんだぜ。その人によって回復力も違うし、早く治りたいって思う人ほど、回復力ってのは早いのかもしれねぇし」 「望ー」 「なんだよー、その訴えるような声は……」 「さっき言うたやんか……仕事のことは忘れてって……」 「……って、お前が悪いんだろうが……」 「だって、その話を振ってきたのは望やで……俺、全然悪くないやんか」 「あ、そっか……」 「もー、望ー、堪忍してやぁ」 「休みの日だから、仕事で使う頭は抜けてんだよ」  雄介は望を砂浜に下ろすと、 「……ってことは、天然モードってことなんかいな?」 「なんだよっ! その天然モードっていうのはさぁ」 「まんまやないんか? 望はな……たまに休みの日は天然さんになるんやで」 「天然って?」  その質問に、転けそうになる雄介。 「ちょ、おい……足の方、本当に大丈夫なのかよー。まだ足がよろけるくらいなんじゃねぇのか?」  その望の言葉に、さらに転けそうになる雄介。 「アホかぁ!? お前がボケるからじゃあ! せやから、俺が転けそうになっただけなんやって……」 「そうなのか? なら、いいんだけどさ」  本当に今の望は、頭が休日モードなのだろう。仕事の時とは違い、しっかりと頭を休ませている感じがするからだ。  しばらく砂浜を歩いていた二人だったが、雄介は足を止めて言った。 「寒いし、そろそろ戻ろうか?」 「あ、ああ……そうだな」

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