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ー波乱ー134

 翌日、二人は目覚まし時計の音で目を覚ます。  昨日の青空とは打って変わって、今日は朝から雨が降っているようだ。その雨音が地面を濡らす音を響かせている。 「久しぶりの仕事やっちゅうのに、雨なんかいなー」  雄介はベッドに半身を起こし、憂鬱そうに呟く。 「確かに雨の日って……憂鬱な気分になるよな」 「まぁ、今日は何も無ければええねんけど。いや、レスキュー隊が出動するようなことが起きない方が一番ええねんけどな」 「確かにそうだな」  二人は着替えを終えると、雄介の方が先に下へ向かい、朝ごはんを作り始める。  望も着替えを終え、下へと向かう。 「望ー、和也にメール入れた方がええんちゃう?いつもの時間に起きてへんかったら、望と同じ時間に来れへんやろ?」 「ああ、そうだな」  望は携帯を手にして、和也へメールを打ち始める。 『起きてるか? 今日もいつもの場所で待ち合わせで……』  メールを送ると、すぐに和也から返事が来た。 『大丈夫だって……もう、和也くんは起きてますよー!』  そのメールを見た望は、安心したような表情を浮かべて、 「和也の奴……とっくに起きてたってさぁ。それに、朝からテンション高かったみたいで、自分のことを『和也くん』って言ってたくらいだしな」  望は和也からのメールを読み、ため息をつきながらリビングのテーブルに腰を下ろす。 「アイツのテンションが高いのはいつものことやろ?飯もできたし、これからはたまにしか俺が作った飯食えへんのやから、食べてな」 「ああ」  望はそう答え、雄介が作ったご飯を食べ始める。  二人で過ごす時間を楽しんでいると、先に雄介が席を立ち、 「ほな、俺の方は先に行くわ。今日からはもう俺は望に付いていけへんけど……ま、気ぃつけて行くんやで」 「ああ、分かった……」  雄介は出ていく前に、望の元へと近づき、唇を重ねる。  そして、望に笑顔を向けて仕事へ向かう。  一人残された望は、しとしとと響く雨音を聞きながら食事を済ませ、食器を流し台へ置く。そして、自分も車で病院へと向かうのだ。  晴れの日より雨の日の方が鬱陶しい。  ワイパーがフロントガラスに付く雨粒をかき消してくれるのはありがたいが、それでも視界はすぐに悪くなる。  望は雨の日の運転が鬱陶しくて好きではなかった。

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