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ー波乱ー135

 おまけに渋滞に引っかかるのだから、イライラも募ってくる。  雨の日っていうのは、晴れの日よりも車が増えるから、その状況も本当にめんどくさい。  だが、きっと和也の方も望と同じ状態なのだろう。  望が病院の駐車場に着いたのは、いつもの到着時間より七、八分遅れた。  望は着いたが、どうやら和也はまだのようだ。いつも駐車している場所には、まだ和也の車がないのだから。  望は腕時計に視線を向けると、少し急がないといけない時間になっていた。  今まで渋滞でイライラしていたのに、さらに和也を待たなければならない状況に、望はますます苛立ち、携帯を取り出す。  和也がまだ運転中だとわかっていながらも、望は電話をかけた。  だが、望の耳に届くのは留守番電話のアナウンスだけだった。  和也は車を運転しているときには電源を切っているのだろうか? いや、前に空港まで送ってもらった時には、電源をオンにしていたはずだ。だが、何故か今日に限って和也に繋がらないのは、どうしてだろうか?  時間もなくなってきたため、望は和也を待たずに車を降り、病院に向かって歩き始めた。しかし、数歩歩いたところで、突然誰かが目の前に現れ、何か薬品の匂いを嗅がされてしまう。望はその薬によってその場に倒れてしまった。直後、望は何者かによって車に乗せられてしまった。  その頃、和也も見事に渋滞にはまり、未だに道を走っていた。 「望の奴……もう着いちまってるかな? ってか、俺さぁ、朝から何やってたんだろう? 早く起きて余裕があったからなのか、ぼーっとしててさ、慌てて外に出たら携帯を水溜りに落とすなんてさぁ、そのまま携帯はおじゃん! 俺の携帯は防水じゃねぇんだぞー! いくら電源ボタンを押しても復活しねぇんだからな! 望とも連絡できねぇし、あー! 裕実とも連絡取れなくなっちまったじゃねぇか!」  車内で長い独り言を漏らす和也。  そして、車に表示されている時間を見ると、出勤時間さえも危うい時間に迫っていた。 「あー! もう、今日は最悪の日だー!」  車の中で一人叫びまくる和也。  だが和也が知らない場所で、望の身に危険が迫っているなんてこと、和也が病院に着くまで知らないだろう。

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