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ー波乱ー137
もしかしたら、ただ携帯を落としてしまって気づいていないのかもしれないと思いながら、和也は部屋の前に立つ。
そして一度自分を落ち着かせるために深呼吸をし、ドアノブに手をかけるが、ドアが開く気配はなかった。
いつもなら、というか、今日も望の方が先に来ているはずだが、望は部屋にまだ来ていないことに気づく。
とりあえず和也は鍵を開けて中に入ってみる。もしかしたら、和也より先に来て、すでに部屋に向かったという可能性もあるのだから。それで内側から鍵がかかっているのは、今までのことを警戒して内側から鍵を閉めているからかもしれない。
和也はいつも以上に慎重に鍵穴に鍵を差し込んでいく。それはなぜなのだろうか?まだ理由はわからないが、今日は何だかいつもの朝とは違うような気がして仕方がないのかもしれない。
その時、息を切らせながら颯斗も駆けつけてきた。
「どうしたんですか?そんなに慌てて……」
「お前には関係のないことだ。仕事が終わったんなら、さっさと帰ればいいんじゃねぇのか?」
颯斗には冷たくあしらう和也。
そして和也は本格的に鍵を開け、ゆっくりとドアを開いていく。だが、部屋内には人影さえもないように思える。
いや、和也はまだ望を探すのを諦めていない。
部屋に足を踏み入れると、ロッカールームからお風呂場まで、あらゆる場所を探してみるが、やはり望の気配はなかった。
ロッカーに目を向けても、望の鞄さえない。つまり、今日、望はこの部屋に来ていないのだろう。
ということは、駐車場には望の車があっても、部屋には望の鞄さえなかった。だが、駐車場には颯斗が拾った望の携帯があったのだから、その間に望に何かあったのは間違いない。
「くっそ! 俺が携帯を、あそこで水に落とさなければ、望と連絡が取れてたのに! 渋滞にさえハマらなければ……こんなことにならなかったのにー!」
和也は部屋の中で悔しそうに叫ぶ。
だが、ここでただ悔しがっているだけでは、望を助けることができないと思った和也は、顔つきを変えて立ち上がると、体の向きを変えて急いで部屋を出ていく。
颯斗はドアの前に立っていたが、和也の姿を視線で追いながら誰かに電話をかけ始める。
和也は仕事のことなど忘れて、いったいどこに向かったのだろうか?
和也は音を立てながら階段を駆け上がり、さらに上の階を目指す。そして、ドアの前に立つと……。
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