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ー波乱ー139
裕実は、和也の濡れているスーツの腕を掴みながら笑顔を向けた。
「うん! 分かった!」
和也は裕実に笑顔を返すと、裕実の手を離し、今度は裕二の方へ体を向けた。
「病院内のことは二人に任せて、僕も望を助けるために協力させてください! 院長、お願いします!」
裕二は一瞬間を置いたが、
「……君は確か……望と一緒に組んでいる看護師さんだったよね? なら、望と一緒にいた時間は長かったというわけだ。 じゃあ、望がそんな状態で仕事に集中できるわけがないだろう。 新城君たちが今日一日、望たちの代わりをしてくれるなら、君は抜けて、私と一緒に望のことを助けに行ってくれても構わないよ」
それを聞いた和也は、
「ありがとうございます!」
そう言って、もう一度裕二に向かって頭を下げた。
「和也さん! このことを雄介さんに連絡しましたか?」
「いや……今までそんな暇もなかったし、考える余裕さえなかった。 それに、俺の携帯、朝に水たまりに落として使えなかったんだ」
そう言う和也だったが、裕実は和也が手に握っている携帯を指差して、
「和也さん……その携帯は誰のですか?」
「ん? これは……望のだけど……」
「じゃあ、とりあえず、今はその望さんの携帯でメールだけでも知らせたほうがいいんじゃないですか?」
「あー!」
和也はその裕実の言葉に声を上げ、早速、雄介の携帯へメールを打ち、送信した。
すると和也は裕二の方へ向かい、
「この携帯、僕が駐車場に来た時に新城先生が拾って下さっていたんです。 以前、望は僕に『命を狙われているかもしれない』と相談してきたんです。 それで、しばらくの間、僕と桜井さんとで望のことを守っていたのですが、今日に限って僕が来るのが遅くなり、望が一人でいた駐車場で連れて行かれてしまったみたいなんです。 本当に申し訳ございません。 今日は僕のミスです。 まさか、誘拐にまで発展するとは思いませんでした……」
和也はそこまで言うと、もう一度裕二に頭を下げた。
「とりあえず、過ぎたことは仕方がない。 今は今のことを考える方が先決だ」
「はい! それと望が言っていたんですが、望が初めて狙われた日に『これは俺の問題だから、親父や病院には迷惑をかけたくない』と言っていたので、今まで言えなかったんです……」
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