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ー波乱ー140

 裕二は和也の告白にひと息吐くと、 「望はそういう性格だからね」  そう裕二が呟いた瞬間、パソコンからメールの着信音が聞こえてくる。  裕二はその音に反応し、パソコンの前に立ち、画面に表示されたメールの文面を読み始める。 『警察には連絡してねぇだろうな……。 まずは夏見駅のコインロッカーに五千万を入れ、鍵を掛けてから黒スーツに黒の眼鏡を掛けた人物にそのロッカーの鍵を渡せ』  その犯人からのメールに、裕二は短く答える。 『分かった……』  裕二はすぐに和也へと視線を向け、 「梅沢君……ここに犯人に要求された二億円がある。私は息子のためならお金は惜しまない。さて、行こうか? まずは五千万を持って……」 「はい! でも、犯人はなぜわざわざお金を分割にしてきてるのでしょうね?」  和也は手を顎に当て、裕二を見上げる。 「一気に二億円だと運ぶのが大変だからだろう? それにそんな大金を持ち歩けば目立つからだろうな。しかも、犯人は大きなカバンにお金を詰めてこいとも書いてあった。時間もないし、とりあえず行くぞ! 間に合わなければ、望が監禁されている場所を爆破すると言ってたしね」 「はい!」  和也は裕二に向かい笑顔で返事をし、二人は院長室を出て裕二の車が停まっている駐車場へ向かう。  和也が院長室を出るころには、もう裕実も颯斗の姿もなかった。二人は和也と裕二が話し始めた時にはすでに仕事に戻っていたのだろう。  駐車場に着くと、裕二は運転席に乗り込み、和也には助手席に座るように指示をする。和也はそれに従い、助手席に乗り込んだ。  雨は朝だけで、今は止んでいるが、空はまだ厚い雲で覆われている。  ふっと和也は車内を見渡し、何かに気付いたようだ。  この車、望の車とよく似ている気がする……。  和也がそう思っていると、裕二は和也の考えを察したのか、ふと口を開いた。 「私の車は望のと同じだよ……」  和也は心を読まれたように感じ、驚いた表情を浮かべる。 「しかも、車種も同じで、色が違うだけだな。私のは黒で、望のは白ってところか」 「へぇー、そうだったんですね……」  和也は、表情だけで心の中を読んでしまう裕二の洞察力に感心していた。

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