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ー波乱ー146
「ま、そういうことなのかもしれないね」
ちょうど話を終えた頃、二人は再び病院の駐車場へ戻ってきた。
裕二と和也は車から降りると、ひと息つき、すぐに院長室へ向かう。
この時間帯だと職員用出入口を利用するより、病院の正面出入口を使ったほうが早いため、二人は病院のロビーの方へ抜けていく。しかし、病院内は相変わらず忙しそうだ。
ロビーには人々が溢れ、診察室の前にもたくさんの患者さんが今か今かと待っている。
いつもならこの時間は、望と和也が一緒に診察している時間でもある。診察室前を通過しながら、和也は患者さんのことが気になるのか、横目で見つつも裕二と院長室へ急ぐ。
その間に救急車も病院へ到着したようで、緊急用入口の方から入ってくる患者さんを横目にしながらも、今は望を助けるために裕二と一緒にいるのだから、とりあえず院長室へ向かう。
いつもの和也なら、こんな状況を見て見ぬ振りなんてできないが、今はそれどころではない。今日は望や和也のために、裕実や颯斗が診察室を見てくれているのだから、もう後は二人に任せるしかない。
裕二は院長室に入ると、パソコン画面に視線を向ける。犯人からのメールは、もうすでに十分くらい前に届いていたらしい。
裕二はパソコンのカーソルを動かし、メールを開く。
そこにはこう書かれていた。
『後、四十分後に秋山駅のトイレの一番奥にある個室にお金を大きな袋に詰めて置いておけ』
「ん?」
裕二が反応する。今の時刻とメールが来た時刻を照らし合わせて、何かを確認しているようだ。
だが、どう考えても予告された時間までには間に合いそうにない。
秋山駅は夏見駅よりさらに遠い場所にある。渋滞がなければ十五分くらいで行ける距離だが、今日は道が混んでいるようで、十五分ではたどり着ける感じがしない。
裕二は今日、最大の心の乱れを感じたのだろう。
「こんなの無理だ!」
裕二は机を叩き、悔しさを露わにしている。
確かに裕二がそうなってしまうのも無理はない。
和也はそれでも怯むことなく、裕二に近付き、
「でも、やってみないと分からないですよね?」
そう優しく言う。
和也がそう言うと、裕二は今の自分の状況を理解しつつも、和也の方へと笑顔を向けた。
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