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ー波乱ー151

 その裕二が見せた笑顔というのは『私になら治せる』という意味なのか、『まだ助かる見込みは分からないけど、和也や雄介のことを安心させるための意味』なのかは分からないところだ。 「梅沢君! とりあえず急いで病院の方に戻って、望の手術をするよ!」 「はい!」  和也はその裕二の言葉に返事をすると、裕二と一緒に救急車へと乗り込む。 「ほな、後は望のことは任せたで……」 「分かってるって! こっから先は俺たちの仕事だからなっ!」 「ああ。俺が望んとこに行けるのは明日になってまうけど、後はよろしくな! 話の方は明日聞くしな」 「ああ……」  和也と雄介の会話が終わった直後に、救急車の後部ドアが閉められる。そして、春坂病院に向けて救急車はサイレンを鳴らして走り出す。 「和也……」 「なんだ?」  呼吸器の合間から聴こえてくる望の声に、和也はそう答える。 「雄介から貰った大切な……いや、俺の命を守ってくれたドッグタグ……俺の手術が終わるまで持っていてくれねぇか? さすがにこれを手術室に持ってくことはできないからさ」 「ああ、わかった。手術が終わったら、絶対に望に渡すからよっ!」  和也は望の右手に握られていたドッグタグを望から受け取ると、あることに気付く。  普段は首にしているものなので鎖で繋がっているはずだが、今はもうその鎖がない。  左腕を負傷していた望だから、きっとこれを外すときには右手に渾身の力を込めて、その鎖を引きちぎったのかもしれないと和也は思った。  和也はそれを大事そうにハンカチでくるみ、ポケットの中へと仕舞う。  現場から病院まではそう離れていなかったおかげで、病院にはすぐに到着し、和也と裕二は望を手術室へと運び、手術を行うのだ。  それから数時間後。  望は目を覚まし、天井を見上げる。  口にはまだ呼吸器が付けられていたが、目を覚ますと聴覚も戻ってきたようで、周りにある機械音が望の耳に入ってきた。きっと今の望には、その機械音さえも懐かしく感じているのかもしれない。  だが今の望は患者として病院にいることに気付いたようだ。  目を覚ましたと同時に、左腕に痛みが走ったようで、 「くっ!」  望の顔には眉間に皺が寄り、全身に力が入ってしまったことで再び痛みが全身へと走り抜けてしまう。

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