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ー波乱ー153

「お前がいけないんだろうが……」 「そうでした」  そう和也は言うと、 「とりあえず、裕実はさ、俺たちの部屋に寝かせて、俺はここに残るから、望はゆっくり寝ろよ」 「俺の患者さんは?」 「大丈夫! 院長が診てくれるって言ってたからさ! だから、しばらくの間は俺は院長と一緒ってなわけ」  それを聞いた途端、望の顔色が変わる。 「おい……それ、本当か!?」 「ああ……。でも、俺的には院長のこと嫌いじゃないし、別に構わないんだけど、むしろ、お前が院長のこと嫌う理由がわからないってところかな?」 「今日、お前と親父の間で何があったんだ?」 「別に……普通にタッグ組んで、望のことを助けようとしただけだけど……。まぁ、その話はさ、望が良くなってからにしようぜ。とにかく、まずは望が寝ようか?」 「ああ、分かったよ」  望は和也にそう言われて仕方なしに目を瞑る。  確かに和也の言う通り、病気や怪我をしたときには寝るのが一番なのだから。  望が眠りにつくと、和也は裕実に自分たちの部屋で寝るよう伝え、一人望の病室に残った。  望がいる病室は、以前雄介が使っていた病室だ。  病室の中でも一人部屋というのは気持ち的に広い。しかし、VIP専用の病室とは若干違い、トイレやお風呂は病室の外に行かなければならない。  和也はそんな中、一人ぼーっとしていた。  今回の事件において、まだ望を監禁した犯人は捕まっていないため、またいつ望がその犯人に襲われるかは分からない。だから、裕実と和也、裕二と雄介が交代で望の見張りをすることになっている。とりあえず今のところは、手が空いている和也が望の見張り当番になったようだ。  和也は一人、望の病室で、 「事件が終わるまでは……だな……」  そう言いながら椅子に腰を下ろす。  望はすでに寝息を立てているようだ。規則正しい望の呼吸が和也の耳にも聞こえてくる。  しかし、よくよく考えると、この病室で和也はやることがない。病室では携帯を使えるわけでもない。  他にやることと言えば本を読むことだが、今はその本さえもない状態だ。しかも一応は望の護衛でいるのだから、和也が寝ることもできないだろう。  椅子に寄りかかりながら、退屈そうに天井を見上げる和也。 「やっぱ、犯人は……内部犯なのかな? それはあくまで俺たちの予想であって、内部犯と確定したわけじゃねぇし……。あ! もう、望は戻ってきたんだから、警察に言った方がいいんだよなー。つーか、普通に明日あたりには警察が望のところに来るんだろうし……ま、とりあえず今日は俺が望のこと見てなきゃならないのは変わらないのか……」

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