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ー波乱ー155
「分かりました……ありがとうございます。それでは、今度は梅沢さんの方に聞いてもよろしいでしょうか?」
「ちょっと待ってもらえませんか? 望に謝らなくてはならないことがあるので」
和也はそう言うと、望の前に座って、
「本当にごめんな。俺が昨日遅れて来なければ、望がこんなことにならなくて済んだのに……いや、電話に出られていたなら、望にこんな目を合わせずに済んだかもしれない。でも、言い訳になっちまうかもしれねぇけど……昨日、望が電話した時、俺の携帯が水に浸かっちまって使えなくなってたんだよ。そんなことがなかったら、もしかしたら望がこんな目に遭わなくて済んだかもしれなかった。本当にごめん」
「いいや……気にすんなよ。なっちまったことは悔やんでも仕方ないんだからさ。それに、もし和也がそんなことになっていなくても、いずれこうなっていたんだからさ。俺が誰かに狙われていたのは確かなんだから」
望はそう言って、和也の方に笑顔を向ける。
だが、その望に、和也は不思議そうな表情をしている。望と裕二が似たようなことを言っていたからだ。とりあえず和也は望の方に笑顔を向けると、やっぱり望と裕二は親子なんだと思ったのかもしれない。そして立ち上がると、
「とりあえず、望が言うように、警察っていうのは何かが起きないと動かないのは知っていたので、僕たちだけで望を守ろうとしていたんです。しかし、望の言う通り、一昨日までは何もなかったんです。でも昨日は、僕がちょうど出勤して来た時に、この病院の駐車場で医者である新城颯斗さんが望の携帯を拾っていたんです。その時、新城さんが話していたのは、『仕事が終わって帰宅しようとした時、自分の車の前にこの携帯が落ちていた』ということでした。それを僕は新城さんから受け取って、悪いと思いながらもその携帯は望のだと思って、中身を見させてもらったところ、やはりそれは望のものでした。ということは、そんなことがあったので、望が誰かに拉致された可能性が高まったように思い、一度、部屋に向かって望を探してみましたが、いなくて。それから望のお父さんの所に行き、報告に行ったところ、院長室にあるパソコンに犯人から身代金の要求があったんです。当然、犯人も捕まりたくはないわけですから、そのメールには『警察には連絡するな』と書かれていました」
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